ノーティードッグ:誰もが楽しめるストーリー体験で新たな地平を切り開く

ノーティードッグの制作する革新的で物語性に富んだゲーム作品、そして出来る限り多くのユーザーの皆さんに自分たちのゲームを体験してもらいたいという彼らの強いこだわりを、私たちSIEは大変誇りに思っています。ノーティードッグの制作チームは、障がいの有無に関わらず、全てのユーザーの皆さんのニーズをより深く理解できるよう徹底的に調査してきましたが、プレイステーション®4用ソフトウェアタイトル『The Last of Us Part II』でその成果を最大限発揮することができました。本作のように、目の不自由な方も含め、全ての方が最初から最後までプレイできるAAA作品はこれまで存在しませんでした。
ゲームのアクセシビリティを高める先駆的な取り組み
ノーティードッグが初めてアクセシビリティ機能に着手したのは、プレイステーション®4用ソフトウェアタイトル『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』を開発している頃でした。彼らは障がいを持つユーザーの皆さんの声に耳を傾けながら、例えば片手で操作できるようにするなど、ゲームの仕様に微調整を重ねることでユーザー体験を大きく改善し、より幅広い層のユーザーの皆さんが楽しめる作品が完成しました。
これを受け開発者たちはますます熱が入り、ゲームにおけるアクセシビリティのレベルをさらに高めるための手法を探ります。『The Last of Us Part II』でも開発にあたり、「ここからさらに高みを目指すためにはどうすればいいか?」と考えました。
『The Last of Us Part II』における挑戦
制作チームは、『The Last of Us Part II』を目の不自由な人も含め、幅広いユーザーの皆さんが最後までクリアできる作品にしたいと思っていました。一見すると夢のまた夢とも思えるような挑戦にも思えましたが、ゲームデザイナーたちは何とか実現させると心に決めていました。
「あらゆるプレイヤーが楽しめるインクルーシブなゲームをデザインする際、最も重要で唯一のルールは、できるだけ開発の初期段階から取り組み始めることだと思います。機能の原型を考え、繰り返し検討し、実地テストを行う時間が長くなるほど、アクセシビリティ機能がゲーム全体の設計により適切に統合されます。また、これによってアクセシビリティの追加が必要な箇所に気づいたり、開発チームが見逃していた、全ての要素を正しく連動させるための機能を発見したりできるのです。」
ソニー・インタラクティブエンタテインメント マネージャー兼シニアプロデューサー Sam Thompson
「アクセシビリティは多くのユーザーの皆さんにとって、とても大事なことなので、新たなプロジェクトに取り組む際、私たちはゲームの物語、レベルデザイン、プログラミング、アート、そして全ての関係部門において、これまでの自分たちを超えるように挑戦しています。こういうチャレンジで私たちは心を躍らせ、自分たちが働く会社を誇りに思うのです。」
ノーティードッグ共同主任ゲームデザイナー Emilia Schatz
「大事なのは(そして同時に我々を大いにやる気にさせてくれるのは)細かい要望にまで耳を傾けることです。つまり、そういった細かな問題が原因でゲームをプレイできなくなってしまう人もいる、ということを知るのです。ユーザーの皆さんが障壁を感じることなく、シームレスなゲーム体験を楽しめるよう、私たちはオプションや回避策を設けます。それが私たちが目指すゲームデザインであり、私たちを突き動かすものなのです。また、これらのアクセシビリティ機能は、決して一部の方のためのものではありません。障壁や困難はさまざまな形で、しかも日常的に存在します。多くの方がゲームを楽しむのと同時に、多くの方がさまざまなニーズを抱えています。」
ノーティードッグ リードシステムデザイナー Matthew Gallant氏
企画段階からアクセシビリティを念頭に置くことで、ノーティードッグは本作において数多くのイノベーションを実現しました。ゲームデザイナーたちは、どのようにすれば第三者視点のアクションゲームを、目が不自由な方でも楽しめるのか、制作現場で『The Last of Us Part II』のアクセシビリティコンサルタントのBrandon Cole氏を含む専門家に話を聞きながら探っていきました。Cole氏は、攻撃の種類や敵の位置を確認できるように、異なった音の合図を用いることの重要性を指摘しました。

Steve Saylor氏はもうひとりのアクセシビリティコンサルタントで、ズーム機能、音声ナレーション、ハイコントラストモードや文字サイズなど、体験改善に向けた提案をいくつも行いました。
「目に障がいを持つ私にとってアクセシビリティ機能があるのとないのとでは、全く遊ぶことができないゲームか、一番のお気に入りになりうるゲームか、くらいの大きな違いがあります。『The Last of Us Part II』では私が常日頃ゲームに感じていた障壁を取り除き、本来の形で楽しむことができます。あまりに没頭できたので、障がいのことを意識することはありませんでした。」とSaylor氏。
最終的にノーティードッグが制作したアクセシビリティ設定は60種類以上にも上り、その中には視覚、広角、運動のサポートに適したアクセシビリティプリセットがあり、、弱視者や視覚障がい者を補助する新たな機能も含まれています。
「『The Last of Us Part II』の機能利用データを見ると、アクセシビリティ設定に関する上位10の機能のうち7つが字幕に関連するものでした。近年のテレビやモニターの超高解像度化、そして多くのユーザーの皆さんがテレビから平均約3メートル離れて座ることを踏まえると、ゲームにとって字幕のサイズや見え方を調整するオプションは読みやすさを向上するうえで非常に重要だということが分かります。アクセシビリティ設定は障がいの有無にかかわらず、全ての人にとってゲーム体験を向上させるものです。」とThompson氏は語ります。

アクセシビリティの高いゲームを業界標準に
私たちは、ゲーム業界が『The Last of Us Part II』の成果に続き、ゲームのアクセシビリティが当然のことと見なされるようになることを願っています。ゲームを制作するときアクセシビリティを後から考えるのではなく、プロダクションの初期からアクセシビリティ機能を優先事項として念頭におくべきでしょう。。ノーティードッグが『The Last of Us Part II』で実験し、研究した開発成果から業界中の意識が高まっていくことと信じています。また、業界を挙げて、さまざまな分野のアクセシビリティのコンサルタントや専門家の声をゲーム開発に取り込み、そのうえで素晴らしいストーリーを誰もが楽しめるようになることが望ましいと考えます。
「インクルーシブなゲームデザインに取り組まれている他のチームの皆さんには、私たちが築いてきたノウハウを活かして、更に進化させていただければと思います。様々な意見を聞き、学び、全ての方が楽しめるゲームを作ることは、業界全体の利益にも繋がります。」とGallant氏。
そしてSaylor氏はノーティードッグに次のような最大級の賛辞を贈りました。「他の開発会社も『The Last of Us Part II』の水準を目指してほしいです。このような素晴らしい経験を全てのプレイヤーが味わえるようにすべきなんです。」
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