■GMG共同創始者 Laila Shabir

Girls Make Games (GMG)*について、そして私がこの団体を共同設立してからの道のりを振り返ると、言葉にできないほどの気持ちになるときがあります。ゲームジャム、サマーキャンプ、ワークショップを通して若い女性の皆さんがゲーム開発のキャリアに就くきっかけを作ることは、私にとって非常に有意義なことです。ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)をはじめとする業界最大手企業の協力もあり、GMGは世界中で2万人以上の女性にこのダイナミックに変化する業界での可能性をお伝えしてきました。

*Girls Make Games(GMG)は、ゲーム業界における男女格差をなくし、次世代のデザイナー、クリエイター、エンジニアを応援するサマーキャンプ&ワークショップです。

Women’s History Month(女性史月間)を記念して、SIEの協力のもと、素晴らしい女子学生たちのチームが開発したゲーム『Find Me』をご紹介します。迷子の影が自身の身体と再会することを目的とした独創的な本作は、近日中にプレイステーション®プラットフォームでのリリースを予定しています*1。GMGの参加者が開発し、PlayStation®Storeでの発売に至ったタイトルは2019年にリリース*1した『Interfectorem』に次いで本作が二作目です。11歳から16歳までの女子学生4人のチームが開発した本タイトルは、GMG主催の2017 Demo Daysのジャッジパネルで発表され大賞を受賞し、クラウドファンディングを受けながらプレイステーション®プラットフォームから発売する権利を得ました。

次世代の女性ゲーム開発者を応援する活動の一環として、そして『Find Me』のような素晴らしい例を通して、GMGキャンプがもたらす好影響の事例として、本タイトルのクリエイターであるKatie A.さんとAvalon B.さんに発売に向けての体験談や素晴らしい女性や少女たちの功績を祝して彼女たちの想いを伺います。

『Find Me』ゲームローンチトレーラー

ゲーム開発の未来を担う女性にきっかけを作る

当時16歳だったKatieは自分を振り返りながら「最初はとても緊張しました。」と語ります。 「一人でシカゴからサンフランシスコまで行きました。知らない人に会うのはとても緊張しましたが、実際に行ってみると皆さん暖かく迎え入れてくれて、色んな人に会って一緒に学べたのはとても楽しかったです。」

ベテランの開発者であってもゲームをローンチするには大変な努力が必要ですが、GMGではアイデアを実現する上で、貴重なスキルを幅広く教えます。

Katie 「開発プロセスにはどのようなものがあるのか、マーケティングとパブリッシングにはどんなことが必要なのか、実際にゲームを発売するまでに何が必要なのかを理解する良い機会になりました。それは、常にオープンマインドを保つのに役立ちましたし、ゲームの発売に至るまでどれほどの時間がかかるのか、理解するきっかけになりました。」

13歳で初めてゲームをリリースしたAvalonは、「ゲーム業界を垣間見ることができて、SIEのサンマテオオフィスをはじめとした色々なオフィスを訪問する機会があったので良かった」と語っています。

Avalon「これは誰しもが体験できるような機会ではないと思っています。ゲーム制作の過程について学べますし、実際にゲーム業界に入る前にちゃんと理解をして備えられるのはとても役に立ちます。」

多くの子どもはアート、音楽、スポーツなど、さまざまな方法で自己表現しますが、このキャンプに毎年参加する女子学生たちはゲームを使って自己表現しています。私たちのミッションのひとつは、彼女たちが、自分自身の可能性に気づくきっかけを作ることです。キャンプに参加した彼女がこの健全な活動に集中し、一日が終わる頃には「今日もまたひとつ達成できた。明日は何ができるようになるのか」と感じる様子はとても魅力的なものです。

Avalon「確かに、『これは、私がやったんだ』と思えるのはすごい達成感ですね。特に私の場合は2つのゲームをリリースしているのでそう感じます。以前からいつかテレビゲームや映画などのエンタテインメント業界でアーティストになるんだと考えていましたが、このキャンプでの経験やGMGがなかったら、自分のゲームすら作れていなかったかもしれません。」

彼女たちを見ている中で、私の一番好きな光景は彼女たちから感じられる自信、そしてキャンプ最終日に誇り高く、ゲームをプレゼンしているときの輝くような姿です。初日はみんな緊張感があり、何をすれば良いのかわからないような表情でやって来ます。プログラムのコードを書いたことがなく、ゲームを作ったこともない。ここで成功できるのかもわからない。そこからたったの15日でこの様子が一変するのです。彼女たちにとって業界に一歩足を踏み入れて、コードを書くことに対する情熱を追い求める機会になれば、というのが私の願いです。

『Find Me』を制作中のAvalon B.

チーム一丸となって

子どもたちがキャンプに参加する中で大きな気づきとなるのが、チームとして取り組むことを学ばなければならない、ということです。キャンプにはさまざまなアイデアがあり、ゲームを作りたいと考え、夢を持った情熱的なメンバーがいる中で交渉をしたり、妥協をしたりしながらもチームとして取り組み、自分たちが好きでかつ自信を持てるものを作る方法を学ばなければなりません。

Katie「私が学んだ最も価値のあることは、みんなそれぞれに役割があり、お互いに助け合うということです。誰もが自分のパートのことにだけ集中することはしませんし、誰もが自分の役割だけに集中するわけでもなく、常に相手を気にかけ、協力しあっています。それがチームのあるべき姿だと思います。」

Avalon「もしチームとして取り組んでいなかったら、今あるゲームは実現できなかったと思います。色んな面でとっ散らかり、完成もできなかったでしょう。それぞれの考えを持ち寄って、すべてのピースがはまったのです。」

2017年のDemo Dayに参加した『Find Me』の開発チーム

ゲームにおけるジェンダーとそのイメージ

通常のプログラムコーディングやゲームデザインクラスにおけるジェンダー比率をみると、ゲームは男性中心の分野であるというイメージが強くなるかもしれません。しかし、GMGでは参加する女子学生たちに、彼女たちと同じ様にゲームを遊ぶのが好きで、キャリアとしてゲーム開発に興味を持っている人がほかにもたくさんいることを伝えています。

Katie「人との関わりという面では、常に自分と同じ趣向を持っている人がいることは素敵だと思います。自分を受け入れてくれる場所があり、クリエイティブな話ができたり、友達を作ったり、仕事のツールについて学べる場があるのも良いですね。GMGは、自分を良く知り、今後何をしたいのかを理解するきっかけを作ってくれるような場所です。」

Avalon「当時、テレビゲームを遊ぶ友達はあまりいませんでした。GMGは、ほかの女の子と一緒に業界にいる女性との繋がりを持つのに最適な場となっています。自分と同じ趣味を持っているほかの女の子たちと会って、コミュニティができるのが良かったです。自分たちが本気でやりたいことをやっているので、お互いに支え合うことが重要なのだと思います。」

未来に向けて

世界規模の新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、GMGでは適切な対応を取りながら、今までにないほど忙しくしています。バーチャルプログラムを継続し、その提供範囲も拡大しました。一年を通して毎週末ワークショップを開催しており、女子学生たちがゲーム制作をする楽しい場を提供しています。今年はこの世界情勢により、夏はバーチャルイベントを継続する予定です。

多くの組織と同様に、2021年は着実な活動の維持を目指し、週末のバーチャルプログラムやサマーキャンプを通して、できる限り多くの女子学生たちが参加できるようにしています。私たちの今後の夢は、GMGのさらなる発展のために、自主学習コースを作ることです。そのことで、GMGがより多くの女子学生に知れ渡り、学びたいと思う彼女たちの意欲にいつでも柔軟に対応できればと考えています。

生徒の皆さんにとって、未来は明るいです。

Katie「GMGは、私にとってターニングポイントになりました。実際に参加してゲーム制作に取り組んでみたことで、これがやりたいことだったのだと、実感できました。いつか自分のスタジオやキャンパスを持って、自分が情熱を持ちながら心に響くようなストーリーを作りたいです。そしてほかの子も同じようにものづくりをする機会を与えて、業界に変化をもたらしたいです。」

Women’s History Month(女性史月間)

3月は女性史月間として、これまで女性が築いてきたさまざまな功績を祝う時でもありますが、それ以上に、今後も女性がなしえることについて考えることも重要です。今、女性ができるとされていることは、まだごく一部にすぎません。場合によっては、まだ女性が進出していないがために、未知の領域となっているケースもあります。私たちは、3月はこれまでの歩みを祝うだけではなく、社会の発展のため私たちが協力し合いながら、さらにどこまで前進できるのかを考える絶好の機会だと思っています。

Girls Make Gamesのサイトはこちら
https://www.girlsmakegames.com

*1日本での発売は未定です

この記事の原文はこちら