PlayStation 5 上で人間のプレイヤーと同条件でのゲームプレイ自動化を実現する AI 技術
発表者:
矢部 博之(フューチャーテクノロジーグループ ゲームサービス R&D )
宮内 佑多朗(同上)
中原 弘貴(基盤システム・エクスペリエンス設計本部 S 部門 3 部)
先日行われた CEDEC 2024(Computer Entertainment Developers Conference 2024)でPlayStation®5(PS5®) 上で人間のプレイヤーと同条件でのゲームプレイ自動化を実現する AI 技術の講演を行いました。 CEDEC は、ゲーム開発者やエンターテインメント業界のプロフェッショナルが集まる日本最大級のカンファレンスで、今年は 2024年8 月 21 日から 23 日にかけてパシフィコ横浜で開催されました。
講演の内容
PS5は多くの機能を有し、それぞれが正しく動作するかの確認には非常に手間とコストがかかります。 我々は、 テストのコスト削減や開発時の不具合の早期発見を目指し、テストの自動化に取り組んでいます。また従来の自動化の手法に加え、近年技術の発展が目覚ましい深層学習などの AI 技術を活用し、ゲームプレイの自動化にも新たに挑戦しています。
今回の講演では、PS5 のシステムソフトウェアの機能テストを自動化するために研究開発した、ゲームの自動プレイを実現するための AI 技術についてお話しました。システムソフトウェアの機能テストはユーザーの皆さんと同じ環境で実施する必要があるため、これを自動化する際にもユーザーが通常得られる情報のみで自動プレイを実現する必要があります。そこで我々は、ゲームの画面情報のみを用いて自動プレイを行う自動プレイシステムを開発しました。このシステムは、模倣学習による AI モデルの作成、コントローラ操作履歴の記録と再生、画像認識によるモデルの切り替えなど、様々な要素技術を組み合わせて構成されています。さらに、実際のゲームタイトルが自動プレイされている様子を動画で紹介し、研究開発の中で得られた模倣学習に関する具体的な知見についても説明を行いました。近年ゲームの規模や自由度が拡大し、ゲームの品質保証テストのコストが上昇することはゲーム業界全体での課題となっています。 我々が開発した自動化技術の知見が、 少しでも品質保証テストの効率化とコスト削減に貢献できれば幸いです。
講演の様子
講演は大変好評で、質疑応答の時間には業界の様々な会社から途切れることなく多くの質問が飛び交いました。
特に、AI 技術の応用に関する質問が多く寄せられ、AI を用いたテスト自動化技術は業界全体が大きな関心を寄せる領域であることを改めて実感しました。
我々の研究は古典的な学習手法を応用しつつ、実用につながる性能を示せた点がユニークであり、 非常に参考になるというフィードバックをいただきました。 今回の講演で得られた知見とフィードバックを活かし、さらに技術を進化していきたいと思います。
発表資料について
今回の講演資料は、CEDiL にて公開されています。(ログイン必要)