Global Accessibility Awareness Day 2024
ソニー・インタラクティブエンタテインメントにおけるアクセシビリティの取り組み
5月の第3木曜日は、アクセシビリティについて話し合い、考え、学ぶことを目的とした「Global Accessibility Awareness Day(GAAD)」です。今年もソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)はGAADを前に、この1年間を振り返りながら、コミュニティとの関わりの意義、障壁を取り除くための取り組み、PlayStation製品やサービスのアクセシビリティ機能、そしてアクセシビリティの向上がもたらすメリットについてご紹介します。
SIEは、誰もが楽しめるゲーム体験の実現に向けて、アクセシビリティの向上を目指した活動を推進しています。特にここ数年は、優先課題としてアクセシビリティに取り組み、リソース、人材、時間を割き、その研究にも今まで以上に注力してきました。その一環として、アクセシビリティを専門とするPlayStation Studios UXRチーム、ハードウェアと周辺機器担当のPlatform Accessibilityチーム、そしてPlayStation Studios、プラットフォーム、マーケティング、広報、ESGなどの部署から集めた代表とアクセシビリティのワーキンググループが結成されました。私たちは、社内関係者に限らず、アクセシビリティコミュニティとも一丸となり、ユーザーの皆さんがよりゲームを楽しめるよう、そして「遊びの限界を超える」体験をお届けできるよう注力してきました。これを実現するために、以下3つの柱をアクセシビリティ戦略として掲げています:
- インクルーシブなゲーム:できるだけ多くのプレイヤーに楽しんでもらうための、アクセシブルなコンテンツ作り
- PlayStation 5本体機能:プレイヤーが簡単にコンテンツや、ソーシャルネットワークにアクセスできる方法の開発
- コントローラーのイノベーション:プレイヤーの誰もがゲームを自由に操作し、楽しむことができる入力デバイスの提供
1つ目の柱:インクルーシブなゲーム
PlayStation Studiosは、2016年発売のNaughty Dogの『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』を皮切りに、画期的なアクセシビリティ機能を実装した大型ゲームタイトルの数々をリリースしてきました。2020年6月発売の『The Last of Us Part II』では、戦闘音響キュー、ナビゲーションと移動アシスト、ハイコントラスト表示、謎解きスキップオプションなど、プレイヤーが抱える障壁を取り払うための先駆的なアクセシビリティ機能を60種類以上取り入れ、ゲーム業界におけるアクセシビリティ機能開発の新たな指針を示しました。
また、近年リリースした人気ゲームにも数多くのアクセシビリティ機能が搭載されています。『ラチェット&クランク パラレル・トラブル』は、開発段階からアクセシビリティを考慮した結果、24のアクセシビリティ機能を実装。直近発売した『Marvel's Spider-Man 2』は、80以上に及ぶアクセシビリティ機能を取り入れることができました。
このような地道なサポートの裏方には、SIEのUX Researchチームの取り組みが大きく貢献しています。同チームは、PlayStation Studiosの社員を対象に、プレイヤーが垣根なく楽しめる方法について話し合うセッションを月2回開催しています。
2つ目の柱:PlayStation 5本体機能
SIEのアクセシビリティ強化の取り組みに大きな転機をもたらしたのは、さまざまな障がいのあるプレイヤーにご協力いただき実施した、自宅でのプレイテストです。PlayStation 5(PS5)本体をプレイテスターにお届けし、本体を操作する様子を遠隔でモニタリングしました。テスターがPS5本体を操作する様子をモニターしながら、フィードバックを集め、アクセシビリティの方向性を決めました。このテストを基に開発された機能の1つが、システムUIでのハプティックフィードバックで、PS5のメニュー画面を操作する際にコントローラーのハプティックフィードバックをオンにすることができます。
PS5は発売時には、11種類のアクセシビリティ機能が実装されていましたが、世界中のコミュニティの声に耳を傾け、ゲーム体験をさらに楽しんでもらえるよう、ズーム機能や、音声読み上げの一時停止と繰り返し、ヘッドホン用モノラル音声、2つ目のコントローラーをアシスタントコントローラーとして割り当てる機能などが追加されました。
PS5のアクセシビリティついて、障がいのあるプレイヤーから一番多く寄せられていた要望は、アクセシビリティ タグの追加でした。ゲーム開発者が、各ゲームが対応しているアクセシビリティ機能をタグ付けすることによって、プレイヤーはゲーム購入の際に各ゲームが対応しているアクセシビリティ機能を簡単に確認することができます。アクセシビリティタグのカテゴリーは、ビジュアル、音声、字幕とキャプション、操作、ゲームプレイ、オンラインコミュニケーションに分類されています。PS5のPlayStation Storeでは、アクセシビリティ タグに対応したゲームが現在300本以上並んでおり、今後も対応するゲームは増えていく予定です。
3つ目の柱:Access コントローラー
PS5用Access コントローラーの開発には、筋力や可動域などの身体に障がいのあるプレイヤーの方々に研究に協力していただき、ハードウェアやUI、製品のパッケージに至るまで、デザインの改良を重ねました。Access コントローラーは、「障がいのある多くの人が箱から取り出してすぐに使えるデザイン」を念頭に設計されました。当社のサンマテオ、ロンドン、そして東京オフィスの製品、デザイン、マーケティング、パッケージングを担当する各チームが協力し、Access コントローラーの開発が進みました。
ありがたいことに、リサーチのリソースが豊富だったため、デザイン段階からとてもスムーズに開発は進みました。SIEは、AbleGamers、Stack Up、SpecialEffectなどの素晴らしい団体やコミュニティから協力を得ることができました。そのほかにも、SIEの社員ネットワークであるABLE@PlayStationを通じて、障がいのある社員からのアクセシビリティに関するフィードバックを集めることもできました。
アクセシビリティコミュニティの意見を踏まえて、以下の3つの軸が決まりました:
- 持ちやすく使いやすいコントローラー:コントローラーは、360度どの方向からも操作でき、平らなところや、車椅子のトレイ、AMPSマウントなどに置く、もしくは固定して使用できる。
- 正確に押せるボタン/割り当て自由なボタン: さまざまな形状とサイズのボタンキャップを用意し、好みに合わせて位置や入力コマンドの割り当てを変更して、快適なプレイ体験をサポートする。
- スティックの有効活用 /調整可能なスティックキャップ:スティックキャップは3種類用意し、プレイヤーのニーズに合わせてスティック感度やデッドゾーンを調整できる。
上記の3つの柱に加え、SIEではCSUNや、TechShare Pro Conference、CES On The Hillなどのイベントへ積極的に参加することで、アクセシビリティに関する継続的な議論を促進しています。これらのイベントはインクルーシブなデザインの重要性を示す貴重な機会で、障がいのあるプレイヤーの声が開発者に届けられることが社会全体への技術革新につながることを体現しています。SIEは、魅力的なワークショップやインタラクティブな出展、そして参加しやすいディスカッションを通じて、幅広いニーズに沿った製品やサービスの開発についての知見を広めるだけでなく、活動家や専門家、そして障がいのある人のコミュニティとのつながりを育み、より良い社会になるよう貢献していきます。
アクセシビリティに配慮した未来
SIEにとって、アクセシビリティに配慮したゲーム開発への道のりは始まったばかりです。アクセシビリティコミュニティからのフィードバックやゲーム業界の新しい技術に後押しされながら、今後も進化を続けていきます。私たちはこれからもコミュニティとの会話を大切にし、より多くの方にゲームを楽しんでいただけるよう邁進していきます。
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