障がいをもつゲームユーザーが集うコミュニティの発展
■Paul Amadeus Lane(アクセシビリティコンサルタント)
約40年にわたり、米国で障がいを抱える方やその家族、高齢者、介護者、医療従事者、セラピスト向けの啓発とその生活の向上に尽力してきたAbilities Expoは、エンドユーザーや業界関係者に向けて、企業がその製品やサービスをアピールする場として、米国で最大規模かつ最も影響力のあるイベントとなりました。
今年開催された「Abilities Virtual Experience 2」は、新型コロナウイルス感染症の影響でオンラインでの実施となりましたが、様々な障がいを持つ多くの方がともに学び、経験を共有し、楽しみながら関係を築く姿に感銘を受けました。
さまざまな障がいを持つ方にゲームの楽しみを

Abilities Expoで素晴らしい思うことの1つが、ゲームに関する議論の場が持たれていることです。これは2014年にAble Gamersが参加し、ゲームがさまざまな障がいを持つ多くのファンにとっていかに重要なものであるか、そしてゲームはすべての人のためのものであることを障がい者のコミュニティに示したことに端を発します。それ以降、状況は良い方向に変わっていきました。本イベントの会場にゲームに関する展示が登場したことで、コミュニティへの影響は絶大なものとなりました。
たとえば、私がプレイステーション®ヴィーアールで初めてバーチャルリアリティを体験した時、車いすを降りて実際に歩いているような感覚を味わいました。歩くだけでなく、宇宙空間で飛んだり浮かんだりする感覚も得られました。ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の参加により、このイベントにおけるゲームの存在感が格段に大きくなり、より多くの参加者が毎年「誰もがゲームを楽しむことができる」ことを実感しています。今年私は、バーチャルで「Developing Accessible Gaming: Opportunities and Challenges」というパネルディスカッションの司会を務めさせていただきましたが、SIEのSam Thompsonさんをはじめとするゲームコミュニティの有識者のみなさんにご参加いただき、ゲームにおけるインクルーシブデザインの重要性について議論を交わしました。
パネルの様子は、こちらでご覧いただけます。
Abilities Expoは最新のゲームやその技術を発表するだけの場ではありません。ここのイベントは、ゲーム業界の方が障がい者の皆さんと、電話やZoomミーティングでは得られないような深い議論を交わす機会を提供する場でもあるのです。一方、障がい者の方は、ゲーム業界の方と意見を交換したり、ゲームを試遊したり、ゲームのアクセシビリティを実現するために必要なプロセスを学ぶことができます。
インクルーシブコミュニティの発展
私は、ゲームにおけるインクルーシブデザインの提唱者としてだけでなく、ゲームのアクセシビリティに関するコンサルタントとしても活動しており、アクセシビリティ機能を搭載するゲームの開発にあたり何を考慮すべきか、開発チーム向けにフィードバックしています。
ゲームをプレイするのに不安を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、今こそゲームを試してみる絶好のチャンスです。がっかりすることはほぼないでしょう。日々立ちふさがる困難に立ち向かい、どのように克服するのか心得ている私たちが、不安を理由にゲームをしないのは勿体ないことです。
私は、コンサルティング活動を通じ、また1人のゲーム愛好家としてAbilities Expoに取り組むことで、障がいをもつ方が直面する課題を改めて認識し、さらに多くの洞察を得ることができました。まだやるべきことは多くありますが、さまざまな障がいを持つゲームファンやインクルーシブデザインの有益性について、ゲーム業界の啓発をさらに推進する素晴らしい取り組みが実施されています。
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