■SIE ESG担当シニアディレクター キアレン・メイヤーズ

ソニーグループが2050年までに「環境負荷ゼロ」を実現するための環境計画「Road to Zero」を推進するなかで、ソニー・インタラクティブエンタテインメントでは製品の効率性を高める取り組みを常に追求しています。先日開催されたソニーグループのESG説明会では、テレビやゲーム機などのコンスーマーエレクトロニクス製品のエネルギー効率向上におけるコミットメントが再確認され、製品1台あたりの年間消費電力量は2020年度に2013年度比マイナス54%を達成しました。

これがSIEおよびPlayStation®5(PS5™)にとって何を意味するのか、詳しく見ていきます。

エネルギー効率

PS5の性能はPlayStation®4に比べて大幅に向上しており(例えばPS5のSSDの読み込み速度はPS4のHDDの読み込み速度の約100倍)、これにより発売当初は、前世代機に比べて特にゲームプレイ中の消費電力が増加する可能性があるものの、私たちはPS5が省エネルギーを維持することに注力しました。

PS5ではAMD Zen 2およびRDNA 2ベースの効率的なチップセット、電源、省電力設定などの改良により、いくつかの重要な消費電力を削減できました。改良を明確に示す事例をいくつかご紹介します。
- PS5では動画コンテンツ再生時およびホーム画面での消費電力を、PS4およびPlayStation®4 Proの発売時に比べ、大幅に削減しています。
- PS5でPS4のゲームをプレイする際の消費電力は、PS4 Proでプレイする場合に比べ最大で約3分の1に削減しています。
- PS5はゲームを一時中断した状態での消費電力をPS4およびPS4 Proと比較して約80%、またインターネットに接続した状態でのUSB充電時の消費電力を28〜39%削減しました。

一般的に、PS5用のゲームをプレイするためにはPS4用のゲームよりも多くの電力が必要ですが、上記の改善により、2013年の発売当初のPS4と比較した場合、PS5の消費電力は約11〜17%減少したと推定しています。PS5でのエネルギー効率化を総合的に勘案すると、PS5は100万台ごとに年間約46,000トン相当の炭素排出を削減すると試算しています。2020年11月から2021年8月までに販売したPS5の場合、5年間の使用で推定6.2TWh(テラ・ワット・アワー)の電力を抑制できたことになり、これは英国の約170万世帯の年間平均電力使用量に相当します。

使用済み製品のリサイクルとパッケージの改善

エネルギ―の効率向上に加えて、本体のリサイクルやパッケージについてもさらに検討し、新たな基準を導入しています。

ゲーム機のプラスチックカバー部分にはPC ABS、ABS、ポリカーボネート(PC)プラスチックを使用し、ゲーム機のリサイクルを支援するために、(100グラムを超える)大きな部品はリサイクル業者向けに販売されている工具で取り外せるようにしています。また、25グラムを超える外部プラスチック筐体部品のハロゲン系難燃剤の含有量は0.1重量%を超えないようにしています。さらに20g以上のプラスチック部品については、材料の組成と難燃剤の含有量(0.1重量%以上の場合)を可能な限り*表示し、リサイクル時にプラスチックの違いが容易に識別できるようにしています。

PS5の発売にあたり、資源効率の高い新しいパッケージ設計のガイドラインを策定し、以前の記事でご紹介したように、PS5とその周辺機器向けに、プラスチックの使用率をグローバルで1~7%(1製品ごとの重量比、比率は製品により異なる)に抑えた新たなパッケージを開発しました。これは重要な一歩ではありますが、2025年までに小型製品のプラスチック包装材を完全に廃止するというソニーグループの計画に沿って、今後もSIEでは様々な可能性を追求していきます。

さらなる詳細について

私たちの環境活動について詳しく知りたい方はぜひPlayStationと環境ページ(英語ページ)をご覧ください。SIEのエネルギー効率向上のための継続的な取り組みや、消費電力量、SIEが推進する幅広い環境活動の概要などの情報がご覧いただけます。また、各コンソールにおける最適な省エネ設定や、PlayStation®Nowのストリーミングサービスについて、最もエネルギー効率が良く環境負荷が少ない利用方法などをご紹介しています。
※例えば、DualSense™ワイヤレスコントローラーとDUALSHOCK®4ワイヤレスコントローラーの充電スタンドを使用する際、ゲーム機側でUSB端子に給電する必要がないことはご存知でしたか?

これらの情報が皆様のお役に立てましたら幸いです。今後も「Road to Zero」の取り組みを継続するなかで、最新情報をお伝えしていきます。

*ISO 11469に準拠、以下の例外を除く:
部品のマーキング可能な表面積が1平方センチメートル未満の場合、部品の性能や機能が制限される場合(表面を触知するためのボタン、プラスチックレンズ、表示面、透明または半透明の部品など)、あるいは使用されているプラスチックが押出成形など特殊な方法で製造され、技術的にマーキング不可能な場合。

キアレン・メイヤーズは、SIEのESG担当シニアディレクターとして、同社のサステナビリティ活動に関するプログラムの方向性の策定と実行を推進しています。メイヤーズは環境技術で工学博士号を取得し、25年以上にわたり、エレクトロニクス分野における環境や持続可能性に関する課題に取り組んできました。仏フォンテーヌブローにあるINSEAD(インシアード)ビジネススクールのExecutive in Residenceとして学術論文を発表したメイヤーズは、2021年11月1日から英ギルホードにあるサリー大学の客員教授としても、サステナビリティをテーマにした研究を続けていきます。

専門家からの反応

「ゼロカーボンに向けた取り組みでの最初の一歩は、(二酸化炭素)排出量の削減であると考えます。そのため、ゲーム機やモバイル機器の電力を削減するゲーム業界の取り組みは非常に重要であり、ソニー・インタラクティブエンタテインメントのような企業が、ゲームプレイの一時停止やエネルギー効率の向上など、排出量削減への取り組みにおける進捗状況を提示するのは喜ばしいことです。気候変動は今や喫緊の課題であり、地球温暖化による気温上昇を1.5度以下に抑えるために、あらゆる手段を講じる必要があります」。
「Playing for the Planet」アライアンス共同創設者 兼 国連環境計画Chief of Youth, Education and Advocacy Sam Barratt氏

「全人口の約半数がゲームを楽しむ欧州では、ゲーム業界が温暖化防止につながる行動にコミットしており、欧州インタラクティブ・ソフトウェア連盟(IFSE)の会員は、欧州および世界中の気候危機に取り組むための目標を支援しています。SIEは、コンソールにおける消費電力の削減、プラスチック使用量の削減、そしてより持続可能なサプライチェーンへの移行など、企業全体で長きにわたりサステナビリティを推進してきており、IFSEはこれを歓迎します。成功を収めた欧州連合ゲームコンソール自主協定や、国連が主催する『Playing for the Planet」アライアンスなども、業界が温暖化防止への取り組みをさらに発展させるための画期的なプロジェクトとなるものです。」
欧州インタラクティブ・ソフトウェア連盟 (IFSE) CEO Simon Little氏

「ソニー・インタラクティブエンタテインメントでは、プレイステーションのコンソールにおけるエネルギー効率の取り組みが後付けではなく、商品の企画段階から重要であると捉え、コミットしていることが分かります。コンソールを使ってコンテンツを楽しむ時もそうでない時も、省エネルギーを実現できるように注力してきました。気候変動に取り組むには、私たち全員がこのような徹底した努力を継続させる必要があります。」
ローレンス・バークレー国立研究所 研究員 Bruce Nordman氏

「ソニー・インタラクティブエンタテインメントは、ゲーム業界でのビジネス判断や方針決定に影響する複雑な環境問題を解明するため、過去15年間にわたり積極的に研究を行ってきました。新たなゲーム機の発売時でさえもエネルギー効率は改善できるということを、プレイステーション®5を通じて示したのは素晴らしいことです。科学的な思考と実用性を両立させたこのような取り組みはどの業界でも不可欠なものであり、壊滅的な気候変動を防ぐために企業が果たせる役割でもあります。」
サリー大学 FIMMM Associate Professor in Sustainable Systems Analysis Centre for Environment and Sustainability Jacquetta Lee氏

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