ゲーム業界では、オンラインゲームプレイの拡大に伴い、すべてのプレイヤーが歓迎され、安心してゲームを楽しめるような空間を育むことがさらに重要になっています。ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)のオンラインセーフティスペシャリストであるBrielle Powellは、自身の経験に基づき、その分野での取り組みを進めています。

「私は、ありのままの自分ではいられない環境で育ちました。そのため、PlayStationは、子供のころの私にとって安全な隠れ家のようなものだったのです。ゲームの世界では、100%自分らしくいられる空間で遊ぶことができ、ありのままの自分を受け入れてくれるコミュニティーがありました。そうでなくても、ゲームの世界は安全かつ匿名性があり、本当に大好きでした。現在では、SIEでの仕事を通じて、次世代の子供たちのために“安全な隠れ家”を築くための手助けをしています」

Brielleは自身の仕事について、「ネットワーク上のすべてのユーザーにとって安全でインクルーシブな体験を提供するためのポリシーを形成すること」だと説明します。仕事内容のなかには、複雑で難しい部分もありつつ、「私たちは、すべてのユーザーにとって最も安全な体験を提供できるよう、オンラインコミュニティーを深く理解することに力を注いでいます」とBrielleは言います。

本記事では、オンラインゲームを通じた彼女自身の発見、eスポーツイベントでの運命的な出会いがどのようにゲーム業界への興味を呼び起こしたか、そして、SIEに在籍する彼女や他の社員の観点がどのように日々の仕事や社内の意思決定に役立っているのかについて、Brilelleに話を聞きました。

ゲームの制覇からコミュニティーの保護へ

BrielleがSIEのオンラインセーフティスペシャリストになるまでの道のりは、小さいころの「安全な隠れ家」に立ち戻ることから始まります。前職にモチベーションを得られず、疲れ切っていたところ、大好きだったゲームに再び社会人としてのめり込んだのがきっかけでした。

「これまでたくさんゲームで遊んでいたので、私はゲームがとても得意でした。そのため、ゲームを競技化した“eスポーツ”の世界に飛び込んだのです」

Brielleは、『SOCOM U.S. Navy SEALs』や『レインボーシックス シージ』をはじめとした競技性の高いタイトルを、何度も繰り返しプレイすることで腕を磨いていきました。

「これらの経験がきっかけで、ゲームコミュニティーの影響力に興味を持つようになりました。誰もお互いの素顔どころか、当時そこまで普及していなかったSNSのアカウントすら知りませんでした。プレイヤーの誰もがありのままの自分を受け入れてくれたので、そこに安らぎや安心感さえ覚えました。好きなことをしながら、完全に自分でいられる空間があることは、とても解放的でした」

そして、いち社員としてゲーム業界に携わるきっかけは、2007年頃、Brielleが所属していたeスポーツ競技のチームが、大会に出場する機会を与えられたことでした。メジャーリーグゲーミングのイベントで、ゲーム業界のさまざまなメンバーがゲームについて話し合うパネルディスカッションに観客として参加したのです。

「ものすごくクールだと思いました。ステージに立ち、ゲームについて語る人たちがいるなんて、想像もしませんでした。そしてその時、ピンときたんです。私が携わりたいのは、自分にとって大事なこと、自分が情熱を注げること、そしてその情熱を他の人たちと共有できるような仕事だと」

それからおよそ10年後の2017年、Brielleは以前観客として参加したパネルディスカッションのステージに、SIEの一員として立つことになりました。その直後、彼女はその「運命的な瞬間」を祝して、PlayStationのタトゥーを入れたそうです。

Pride@PlayStationの活動

オンラインゲームで自分らしくいられたように、BrielleはPlayStationでも自身の居場所を見つけることができました。なかでも、SIEの社員ネットワーク(eNet)のひとつである「Pride@PlayStation」(LGBTQIA+の社員が想いや意見を共有できる場を作り、彼らの平等性を推進する活動を実施)の共同代表として、彼女は本来の自分らしさを発揮しながら、さまざまなバックグラウンドを持つ人たちと、あらゆる体験や経験を共有しています。Pride@PlayStation、ABLE@PlayStation、Black@PlayStationをはじめとしたeNetは、あらゆる観点から物事を考える機会を提供してくれるため、Brielleや彼女のチームの仕事内容に、日々大きな影響を与えていると言います。

「さまざまなeNetを通じた連携は、PlayStationのコミュニティーに素晴らしい影響を与えていると思います。PlayStation上で何が許され、禁止されるべきか。特定のコミュニティーにとって何が不快か、またはそうではないか。これらの方針について私たちが単に推測するのではなく、これらのポリシーの影響を直接受ける可能性がある人々で構成されているeNetに相談し、話し合うのです」

「言語は日々変化するものですから、私たちは年間を通じてeNetと話し合いを続けています。昨日は不快に感じられたことも、今日はそうでないかもしれない。社会情勢に変化が起きたとき、私たちはそれらの影響を受けるであろう特定の団体や地域の社員に相談し、常に変化し続ける私たちのポリシーをより良くするためのアドバイスをもらうのです」

Brielleはまた、人々が自分たちのアイデンティティを祝福し、称えることができるような支援活動に力を注いでいます。

「"PlayStation Gear store"(PlayStationの公式グッズを販売するオンラインストア。欧米の一部地域・国でのみ展開中)に関わるのがとても好きなんです。多くの企業は、プライド月間をマーケティング施策の一環として都合よく利用し、年に一度しか支援しないことを非難されるケースが多々ありますが、PlayStationでは違います。PlayStation Gear storeはLGBTQIA+コミュニティーの一員、またはアライ(LGBTQIA+の活動を支持し、支援している人たち)である人々によって作り上げられ、活動を積極的に支援しながら、プライド関連の製品を一年中扱っています」

一人ひとりのアイデンティティを尊重し、祝福することはSIEの社内でも推進され、ジェンダー肯定医療ケアや、オールジェンダートイレの設置をはじめとした、さまざまな取り組みに反映されています。

「SIEは社員ととても真摯に向き合い、社員一人ひとりが成長し、楽しみ、そして働くことができる環境を目指しています。そのため、私も実務に加え、Pride@PlayStationのeNetを通じ、人事チームと密に連携しながら、社内全体がインクルーシブかつ公平であるよう、精力的に取り組んでいます」

未来に誇りを持つ

プレイヤー同士の交流の場は常に進化しています。だからこそ、ゲーム制作に携わる人々からゲーム内に登場するキャラクターたちまで、それぞれが公平に扱われるような施策も常に進化することが、ゲーム業界全体にとって非常に重要なのです。

「PlayStationの作品においては、ゲームだけでなく、あらゆるメディア媒体で多様な観点や表現が見られるのは、とても幸運なことです。近年ではテレビ番組でも多様な表現が増えていて、これらは本当に大切なことだと思います。私が小さいころはあまり考えられませんでしたから」

Brielleは、現実世界で安心して自分らしくいることが難しい場合、ありのままの自分でいられる安全な居場所がオンライン上に存在することは、とても貴重で大切なことだと自らの体験を通して実感しています。

「PlayStationの電源を入れれば、自分と似たような外見や行動をとるキャラクターたちが目の前に現れます。ゲーム内では誰もが歓迎され、互いを誇りに思っています。私たちがプレイヤーの皆さんの物語を語り継いでいくと同時に、皆さん自身が成長し、自分らしい物語を描きながら、他のプレイヤーたちとそれらを共有していって欲しいですね」

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