ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)では、社員がライフイベントに直面したときも、仕事を継続しながら力を発揮できる環境を整えており、性別の区別なく、仕事と家庭生活の両立を重視した各種制度導入・職場環境整備を行っています。そこで今回は、これらの制度を実際に利用した社員二人と、人事担当に産休・育休の取得から復帰するまでの流れや、復帰後の仕事と育児の両立での実体験などを聞いてみました。


米山渓(よねやま けい)

グローバル商品企画部に九年程在籍し、現在はプロダクトマネージャーとして、担当商品のリリースまでのプロジェクト管理、ユーザー体験などをディレクションしている。夫と二歳の息子の三人家族。趣味はゲーム。むしろゲーム好きなので入社。『ファイナルファンタジーXIV(FF14)』にハマっているが、最近は中々時間が取れず韓国ドラマを見がち。

加藤宙(かとう ひろし)

インタラクションR&D部門所属。入社二十二年目。将来のプレイステーション®はどんなものが良いかを日々研究している。家族は妻と子供三人(六歳,四歳,〇歳)。ゲームは「信長の野望」シリーズが好きだが、子供に引っ張られて最近は『Minecraft』をプレイ。

笹本里佳(ささもと りか)

総務人事部ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン課に所属。育児・介護・不妊治療・特定治療などライフイベントと仕事の両立のための支援施策検討から、個々の置かれた状況に応じた両立相談を担当。

支え合うSIEのカルチャー

―早速ですが、米山さん、加藤さんのお二人はご出産や育児にあたりどのくらいお休みを取得されましたか?

米山       産休と育休をあわせて一年三か月ほど休暇を取得しました。

加藤       私は子供が三人いるのですが、一人目の時は一週間ほど、二人目の時は同時期に自分の手術をしたのと合わせて三か月強、三人目の時は一ヶ月半ほどお休みさせて頂きました。

― 米山さんが産休を取得されたのはプレイステーション®5(PS5™)の開発が忙しくなっていく時期と伺いました。

米山        ちょうど開発が本格化していく佳境の時期で妊娠が分かりました。当時はPS5のある機能のプロダクトマネージャーをしていて、発売に向けてチームをリードしていく大事な時期だったので、妊娠は嬉しいものの、途中で離脱してしまう後ろめたさやこれまでのキャリアを手放すことへの不安や葛藤はありましたし、今の時期に抜けるの?という反応があるのではと心配もしましたね。

― それは不安になりますね。周囲の方に伝えた際の反応はどうでしたか?

米山        当時はコロナ禍の前で、一~二か月に一回海外に出張していたこともあり、安定期前の早い段階で上長に伝えたのですが、何一つネガティブなことは言わず「おめでとう、嬉しいよ。」と声をかけてくれて。まだ珍しかったテレワークを上司自ら提案してくれたり、休みに入るまでの働き方や、引継ぎのスケジュールの相談に親身に対応してくれました。同僚は後輩がメインでしたが、みんなお祝いしてくれ、普段の会議では自分がホワイトボードを書いて消していたのを自ら交代してくれたり、少し遅くまで残っていると「早く帰ってください」と声掛けしたりしてくれました。一緒に悩んで心配してくれて、自分が無理しなくていいような、暖かい雰囲気でしたね。休みに入る予定の1か月前には引継ぎが完了し、すっきりした気分で休暇に入れました。

― ありがたいですね。加藤さんの方はいかがでしょう?お子さんが3人いらっしゃると、段々慣れてくるものでしょうか?

加藤        一人目の時は、丁度夏休みの時期だったのでそれに上手く絡めながら有給休暇休暇を取得し、あわせて一週間ほどお休みしました有給休暇が、他の人に仕事をお願いすることはありませんでした。二人目は十一月中頃に出産予定で、六、七月くらいから「今回は産まれた後、年末まで有給休暇を取得します」と宣言し、七月からゆっくりと引継ぎを開始しましたが、八月末に自分が心臓の手術を受ける必要があると判明したので、急遽九月下旬から入院することになりました。九月下旬から十一月末までは病気・手術による休みなので、欠勤扱いにして傷病手当を貰いました。子供が産まれたあとの十二月は有給休暇を取得し、九月下旬から合計三か月休みをもらいましたね。

― それは大変でしたね。突然のことで引継ぎも大変だったのではないでしょうか?

加藤        それまで余裕をもって進めていたものを、急遽二週間程度で完了させました。急なことでしたが、みんな必死に色々と聞いてくれて、自分が気づかなかった仕事にまで気にかけてくれるほどサポートしてくれました。

個人の状況にあわせて、何ができるか、ともに考える

― 引継ぎは終わらせたものの、三か月程のお休みを取得されるにあたり、その他不安に感じたことはありましたか?

加藤        職場に復帰する頃に有給休暇を使い切ると、子供の誕生後病院に行くのにも困ることになるのではないかと不安でした。そこで人事の方に相談した際、「使える制度は何でも使ってください、これまで無かった制度同士の組み合わせでもどんどん使ってください」と言われたのが印象に残っています。色々と調べてみると、欠勤しても一定の条件を満たすと、傷病手当を頂きながら有給休暇を残して休ませてもらえることが分かりました。理由があって休む分にはセーフィティネットがあることを実感しましたし、この時の経験を基に、三人目が産まれた時には雇用保険より給付金を頂ける育児休業も一カ月間利用しました。

米山        私も産休を取得する年は、妊娠期のつわりなどの体調不良で休暇を取得することが増え、有給休暇の残日数が少なく、どうすれば良いのか人事の笹本さんに相談しました。

笹本        私自身急な入院をした際に有給休暇を使いきり、復帰しても育児のために有給休暇が取得できない経験をしています。有給休暇がなくなるのは精神的にもプレッシャーになりますし、特に妊娠期には何があるか分かりませんので、必要な時に休みが取れることが重要です。医師から診断書が出るケースではそれを貰うように、という話もできますし、ライフ休暇など会社の制度で何が使えるのかを一緒に考えました。

― 一人一人の状況にあったアドバイスをしているということですね?

笹本        それぞれの方の事情により既存の制度をどう使えるか、どうアレンジして組み合わせられるのかが変わってきますし、何を必要とされているのかも変わります。まずは個別のご要望を聞き、制度の使い方を提案したり、何を考えるべきかアドバイスをするようにしています。時には、社外の制度、世の中や各自治体の制度の使用を考えてみてはどうかという話もしています。

― 休暇に入る前の話を伺いましたが、休暇中も何かサポートはありましたか?

米山       産休を含めて一年三か月休みましたが、定期的に申請する書類があり、中には複雑で理解が追いつかないものもあったので、その都度笹本さんから記入方法を教えてもらっていました。保活*では特にやりとりが多く、電話で相談に乗ってもらうなど手厚くサポートしてもらいましたね。様々なタイプの保育園がありますが、自分の場合は家庭環境や住んでいる自治体の関係上、早めに仕事に復帰したいと考え、先に認可外保育園に預けようと思い、会社の制度で契約できる保育園を紹介してもらいました。結果、狙っていた保育園の契約には至らなかったのですが、会社に復帰する時期や保育園など、満足する形で調整できました。

雪の日の送り迎え

笹本        育児休職中の皆さんは、保活に不安を感じられているなか、経験が無いながらも情報を集めてこられるので、それを元に一緒に考えていきます。保育の選択肢も多様化しているので、途中での転園などを視野に検討するケースもあります。復職後の社員の皆さんには、両立支援制度を通じて子育てをしながらお仕事でも活躍していただきたいですが、当事者の声を実際に聞いて制度に反映させられるのも嬉しいですね。

「産後ボケ」を乗り越え、徐々に全開モードに

― 保活も無事に終わり、お仕事のほうはどのように再開されたのでしょう?

米山        事前に上司と面談し、何をするか話していましたが、新しいことをやりたいという思いがあり探すことになりました。もちろん急には見つからず、まずは元居たチームに戻る形で復帰しましたが、三か月後に部内の別の課に移ることが決まりました。違うプロダクトを担当することになり、気持ち的にもリセットして新たな分野にチャレンジできたのは良かったですね。

― ということは、順調な滑り出しということで?

米山        それがそうでもなく、一年数か月休むと、気持ちや頭が仕事モードに入るのに時間がかかりました。以前は結構話せていた英語が会議で出てこなくなる、なんてこともありましたね。最初は苦労したのですが、数か月したら徐々に戻っていきました。

― キャッチアップのために何かやられたのですか?

米山        会社の状況ががらりと変わっていたので、個別に様々な人と話す機会を持ちました。自分の部署の他の方や、他の部署の方と1対1のミーティングをセットし、今やっていることや商品のことを聞いたり、近況を聞いてまわったりしました。

テレワークの浸透でかわる育児

― 仕事に慣れていくなかで、ご家庭や育児とはどう両立されているでしょうか?

加藤        育児と仕事のバランス面で言うと、一人目の時は育児休業中の妻が全面的に面倒を見ていて、私は特に仕事を減らさず「育児を手伝う」感じでした。二人目の時は、手術後療養中で家に居る時間が長かったこともあり、より能動的に育児を担ったように思います。三人目の今はコロナ禍でテレワークが社会全体で浸透する中での子育てで、仕事中でも子供の相手ができるのがありがたいです。また、会社のベビーシッタークーポンが利用できたので、そちらも活用しました。

米山        コロナ禍前にもテレワークをしていましたが、その頃はまだマイノリティでした。テレワークをする側からすると、情報が共有され辛い、会議室内の会話に追いつかない、など不便を感じていたのですが、今は皆がその不便を感じていて、お互いに理解があるので、だいぶ状況が変わりました。

加藤        コロナ禍前はテレワークでの働き方が想像できず、子育て中にも利用できる制度と言われても同僚を含め使用していませんでしたが、今は皆理解しており、子育て世代にとっては環境が一変しました。私の場合、育児休業中の妻に用事ができると自分が有給休暇を取得していましたが、テレワークの浸透した今は普通に仕事しながら子供の面倒も見られています。制度が存在しているだけなのと、皆がその制度に慣れていることには大きな違いがあると実感しています。

仕事をしながらも子供の相手ができるのがテレワークの魅力のひとつ

― 男性の育休取得は、国内ではやっと浸透しはじめてきているという印象ですが、奥様の反応やお休みのバランスなどは変わってきていますか?

加藤        仕事の性質上、私の方が融通が利くため「子どもに何かあれば自分が見るよ」と妻には伝えてきましたが、一人目の時は半信半疑の様子でした。そこが三人目の時には「はいはい、よろしく」と任せてくれるようになっています。個人的には、自分ひとりで見られる、つまりミルクをあげて、オムツを変えられるようにはなるべき、と考えます。新生児でまだうんちが臭わない時からオムツを変えてきたからこそ、今も気にせずうんちのオムツも交換できます。

笹本        女性も男性も親になる準備が必要です。男性は妊娠期間がないので、早い段階から心の準備をし、一緒に育児していくことが大事なのだと思います。

― ありがとうございました。最後に、産休、育休を取得された感想をお願いします。

加藤        手術と2人目誕生でお休みに入る際「仕事は何とかできるが、ご家族にとって加藤さんは一人しかいないので、家族第一で行動してください」と上長からメールを貰いました。「自分が抜けると仕事が回らなくなるのでは」と感じるかもしれませんが、職場は本来、人が抜けても回るようになっているはずで、過度に不安がらなくてもよいかと思います。子供の誕生は多くの人に訪れるライフステージの一つで、子供に向き合う覚悟とそのための準備が必要です。産まれる日は予めわかるので、周りに希望を伝え準備しておくこと、そして産まれたその日から子供に関わることが、父親として非常に大事だと思います。

米山        お休みに入る前後は周りの人に気を遣い、ストレスに感じる事も多いのではと想像していたのですが、みんな案外優しく、SIEには理解しあえる風土があると感じました。休む必要がでてきた時に優しく受け入れてくれたので、周りの人に何かあれば今度は私がサポートしようと考えています。そういうのは巡り巡るもの、という心持ちで仕事をしていると、仕事と家庭を両立させられるかなと思います。

SIEの育児両立支援制度の概要はこちらからご確認いただけます。

*子どもを保育園に入れるため保護者が行う活動のこと