ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)は、時代を象徴するハードウェア、先駆的なネットワークサービス、数々の受賞歴を誇るゲームタイトルなど、PlayStationの製品とサービスを通じ、革新的で心を揺さぶる感動体験を世界中のプレイヤーに届けています。その中、LSI (Large Scale Integration)開発には製品開発に不可欠です。

本記事ではLSIエンジニア採用を強化するにあたり LSI開発部門の見所をご紹介します。LSI開発部門のリーダーシップ、また同部門で活躍するエンジニアのみなさんを取材しました。シリーズの第一弾はLSI開発部門のVP萩原 哲也(はぎわら てつや)に話を聞きました。

最適なコストで最大限の性能を引き出すLSI開発に注力

LSI開発部門について教えてください。

SIEではPlayStationのハードウェアからソフトウェア、アプリケーション、サービスまでの企画開発を幅広く手掛けている会社として知られています。その中でも私たちLSI発部門は、PlayStation向けの半導体、特にセミカスタムLSIの開発に携わっています。直近ではPlayStation 5およびPlayStation VR2に搭載するセミカスタムLSIの開発を担当しました。

LSI開発部門が仕事を進める上で大切にしていることを教えてください。

私たちが開発するLSIはPlayStationのハードウェアのコアとなる部品であり、LSIの性能や開発・製造コストは製品の付加価値やコスト競争力に直結します。そのため私たちは「最適なコストで最大限の性能を引き出すための開発」にもっとも注力しています。

また、私たちLSIチームだけでSIEが発売する製品のLSIを作ることはできません。商品企画部門やソフトウェアチーム、ハードウェアチームのニーズ、さらにはゲームデベロッパーのみなさんの要望などもお聞きしながら、PlayStationに関わるあらゆる人々がより良いゲーム作りを行えるようなLSI開発を心掛けています。

PlayStationの開発には数千人以上の人々が関わっています。ゲームデベロッパーまで含めれば数万人レベルになるでしょう。また、年々システムの高度化・複雑化が進んでいることも考慮すると、これまで以上にさまざまな関係者の皆さんとのコミュニケーションを大切にしていかなければならないと考えています。

近年のLSI開発部門の成果・実績についてお聞かせください。

直近ではPlayStation 5とPlayStation VR2の開発・リリースに貢献しています。PlayStation 5は2020年11月に発売されましたが、リリース直前に新型コロナウイルスのパンデミックが発生しました。開発メンバーの多くが出勤できない困難な状況の中、リモートワークでの開発を継続し、予定していた量産・リリースの目標を達成することができました。また、2023年に発売されたPlayStation VR2に関しても、ハードウェアのコアとなる半導体開発を目標通りに成し遂げることができました。

CPU、GPU、高速I/Fなど、さまざまな領域に強み持ったメンバーが在籍

LSI開発部門の業務内容や業務工程について教えてください。

業務でのウェイトが高いのは、半導体開発の仕様策定と検証評価です。実際のLSIのデザイン(設計)工程については、世界各国の LSIベンダーと共同で設計・開発を進めています。

仕様策定に関しては、先ほどお話ししたように商品企画部門、ハードウェアチーム、ソフトウェアチーム、さらにはゲームデベロッパーの要望を聞きながら「数年後の最強LSI」のイメージを想像しながら検討し、仕様を決めていきます。この工程では半導体のアーキテクチャや各種関連技術に対する知識が求められます。

その後、LSIベンダーへの発注および共同設計・開発を行い、完成した試作品の検証評価を実施します。この工程では、試作品のチップが「私たちの所望する機能を満たしているか」「想定していた性能を出すことができるか」などについて確認します。

実際の検証評価はC++などで作ったテストコードを用いて実施しますが、テストコード自体は自分たちで作る必要があるため、LSIに関する知識だけでなくソフトウェアに関する知識・技術も必要となります。

開発業務についてはチームで進められていると思いますが、どのような専門性を持ったメンバーが活躍していますか?

私たちが開発しているLSI・半導体は、複数のブロックによって構成されています。たとえばCPUやGPU、オーディオコーデック、メモリインターフェース、さらには高速のインターフェースなど、さまざまなIPが集まって一つの大きなチップとなります。そのためCPUの専門家、GPUの専門家、高速インターフェースの専門家など、各領域についての知識・技術を持ったメンバーが集まり、議論・検討を繰り返しながら仕事を進めています。

どのようなバックグラウンドを持った人たちが多いのですか?

メンバーの大半はエンジニアです。キャリア採用のメンバーも多いですし、ソニーグループやSIEに新卒で入社し、LSI開発部門でキャリアを積んでいるメンバーも少なくありません。若手から豊富なキャリアを持つベテランまで、幅広い年齢層のメンバーが在籍しています。

技術分野に関しても、LSI・半導体の設計経験者、LSIのプロセス開発経験者、ハードウェア設計の経験者、ソフトウェア設計の経験者、セットカンパニーでの経験者など、多種多様なバックグラウンドを持つメンバーが活躍しています。

やはりゲーム好きな人が多いですか?

ゲーム好きな人が多いことは確かです。プライベートでゲームを楽しんでいるメンバーも多く、新しいゲームの内容や技術について議論している人たちを見かけることも珍しくありません。ただし、全員が全員というわけではなく、純粋にLSIや半導体周りの技術が好きなメンバーもいれば、ゲーム業界のビジネスに興味を持っているメンバーもいるので、必ずしもゲーム好きである必要はないと思います。

PlayStationの半導体開発に携わることで得られる大きなやりがい

エンジニアの皆さんは、どのようなことにモチベーションを感じながら仕事に取り組まれていますか?

半導体開発に携わるやりがいは大きいと思います。私たちが開発しているLSIのトランジスタ数は約10億〜100億個です。これは世界トップクラスの半導体メーカーが作るCPUやGPU、スマートフォンのチップに匹敵するトランジスタ数です。半導体プロセスに関しても世界最先端のプロセスを用いた開発を行っています。

また、SIEのLSI開発部では、商品の企画から半導体の仕様策定、設計、評価、量産までの工程に一気通貫で関わることができます。半導体開発全体の流れを知ることができるため、エンジアとしての視野やキャリアに広がりが生まれまるはずです。実際にそのようなポイントに魅力や楽しさを感じて働いているメンバーが多いと思います。

キャリア入社の場合、どのような転職理由で入社される方が多いのでしょうか?

やはりPlayStationブランドや知名度のあるカスタマー向け製品に魅力を感じて入社されている方が多いと感じます。とくにPlayStation 5に関しては数千万台以上の出荷を見込んでいますが、このような規模の製品の開発を担当できるチャンスは貴重だと思います。

また、他社でLSI開発をされていた方々は、「自分が作ったチップを自分自身で使う」という経験ができるSIE独自のフィールドに魅力を感じられるようです。

一般的な半導体メーカーでは、自分たちが開発したLSIや半導体が搭載される機器までは追えるとしても、その後、どのように市場に展開され、世界にどのような影響を与えるか、といった領域まで追いかけるのは困難です。一方、私たちはチップのカスタマーでありながらチップを開発している立場でもあるため、自分たちの作ったチップがどのようにゲーム作りに活かされ、どのように世界の市場にインパクトを与えるかまで、すべての流れを俯瞰的に追っていくことができます。

LSI開発部門が求めている人物のイメージについて教えてください。

現在活躍しているメンバーのバックグラウンドと重複しますが、LSI・半導体の設計経験をお持ちの方、LSIのプロセス開発経験をお持ちの方、その他のハードウェアの設計経験やソフトウェアの設計経験をお持ちの方など、幅広い技術分野のスキル・経験を持った方々が活躍できるフィールドがあると考えています。

また、チームで仕事を進めるために必要なコミュニケーション能力も大切です。ご自身のバックグラウンドや特定分野の専門性をベースとしながらも、それを活かすことだけにこだわるのではなく、仕事を通してさまざまなメンバーとコミュニケーションを取り合いながら、周辺分野の技術についても理解を深めていけるような方に期待したいです。

入社後のプロセスについて教えてください。

キャリア入社の方については、前職までの技術的なバックグラウンドを考慮し、ご自身のスキル・経験などにマッチした業務へのアサインを予定しています。配属後は一人ひとりにチューターが付き、業務環境の整備、業務知識の習得などをサポートできる体制を整えています。また、チーム全体で、誰にでも気軽に相談できる雰囲気を作っているので、何か困ったことがあればいつでも周囲のメンバーに質問できるような環境で働けます。

求められる語学力のレベルについて教えてください。

アメリカ、イギリス、日本の3拠点体制で開発を行っているほか、海外のLSIデザインハウスやゲームデベロッパーとのコミュニケーションも頻繁に発生するため、英語の読み書きに関しては相応のレベルが求められます。また、オンライン会議や海外出張も発生するため、話す技術についても高いに越したことはありません。もちろん、入社時から高度な語学力を求めているわけではありません。まずは読み書きが問題ない方であれば、そこをベースにして英語を学んでいくモチベーションさえあれば十分に対応いただけると思います。

SIEでは、自分たちの作ったチップが世界に与える影響を知ることができる

LSI開発部の今後のテーマや目標についてお聞かせください。

ここ数年、半導体の動向がニュースになることが増えているように、半導体業界は再び世界の注目を集める産業となっているように思います。半導体は約50年にわたって継続的に進化を続けてきました。そのような進化の過程では、技術の複雑化・高度化が進むことは避けられませんが、私たちはPlayStationのコア技術であり、競争力の源泉となるLSI・半導体の技術を維持し続けていく必要があります。そのためにも、常に半導体やテクノロジーの進化をキャッチアップし続け、 PlayStationの未来に向けてより良い半導体を開発し続けていくことが、私たちの使命であると考えています。

最後に、SIEでのLSI開発に興味を持たれている方々へのメッセージをお願いします。

先ほどの話と重複しますが、SIEでのLSI・半導体開発では、半導体だけを開発する環境とは異なり、自分たちの作ったチップが世界に与える影響を直接感じられるという貴重な経験を得ることができることが大きな魅力だと思います。さらにSIEでは、ハードウェアの開発者、ソフトウェアの開発者、ゲームの開発者など、さまざまな職域のメンバーとコミュニケーションをする機会があるため、自分たちが作るLSI・半導体の真の価値を実感することもできるはずです。

もう一つのSIEの魅力は、自由にキャリアを構築できることです。私たちとしては、みなさん一人ひとりのチャレンジしたい仕事、実現したいキャリアなどを可能な限り尊重するつもりであり、そのような文化を根付かせたいと考えています。新卒の方も中途の方も、SIEに入ってやりたいこと、叶えたい夢がたくさんあると思います。私たちはそんなみなさんの夢や希望に寄り添いつつ、一緒に走っていきたいと考えていますので、ぜひ積極的にエントリーいただきたいと思います。

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また、LSI開発部門で活躍する社員のインタビューはSIE採用ページからご覧ください。