ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)のエンジニアリングチームであるNPX (Network Platform Experience) では、「LAB(Learn And Bloom)」と題されたインターンシッププログラムを毎年夏に開催しています。第二回となった昨年は、5月23日から8月2日まで 北米の著名大学に通う6名のインターン生を受け入れていました。

LABについて

このインターンシッププログラムは、人事部の協力のもとNPX独自で企画運営されているため、通常の国内インターンシッププログラムとは異なり、以下のような特徴があります:

  • 国内の大学ではなく、海外の大学の正規留学生をターゲットとしていること
  • すぐには採用に直結しない大学1・2年生を対象としていること
  • 開催期間が約2ヶ月半と長期間のプログラムであること
  • ソフトウェアエンジニアリング特化のプログラムを提供していること

第二回のインターン生の課題は、 PlayStation®︎5 で実際に起こっている問題に対しての技術的な解決策を練ること。その解決策をもとに自分たちで UI/UX を考え、バックエンドからフロントエンドまでを設計し、ブラウザベースのプロトタイプとして実装することでした。

大学でコンピューターサイエンス関連を専攻している6名ですが、チームで一つのシステムを作ることはほとんど初めての経験です。そこで今回は、プログラム参加者5名がなぜSIEを選んだのか、また何を学んだのかを一人ひとりにフォーカスしてインタビューしました。

※6人目のラッフォーネさんは、取材時に新型コロナ感染症の濃厚接触者になったため、インタビューは欠席となりました

SIEでインターンシップをしようと思った理由は?

*お名前は以下敬称略。実際に皆さんが呼び合っているファーストネームで記載します。

健太:とあるキャリアフェアに参加したときに、数々の企業の中で一番楽しそうだと感じたのがSIEでした。

説明も、質問の回答もりきさん(今回のプログラムの総責任者である コラーナ 理輝シング)が丁寧に答えてくださっていたのが印象的で、ここでインターンシップがしたいと思いました。

他の企業の説明は堅い印象があったのですが、やはりゲーム関連の会社だからなのか、ユニークな雰囲気に惹かれました。

隆介:僕が応募したときはまだ大学1年生でした。日本の大学も同じだと思うのですが、コンピューターサイエンス専攻の一年目は理論、数学、統計を教わったり、ベースになるコーディングのスキルを習ったりするだけの学年なんです。そこでりきさんから、SIEのインターンシップではソフトウェアのバックエンドからフロントエンドまで、なんでも実践できると説明を受けたので、いろいろなことを試してみて、将来に繋げたいと思ったのが大きな理由です。

賢朗: 理由は二つあります。一つめは小さな頃からゲーム開発がしたくて、将来はそれを仕事にしたいと思っているからです。だから「ゲーム会社でインターンと言ったらSIEでしょ!」と選びました。面接時のりきさんの雰囲気もとても良くて、担当部長レベルの方とお話しする二次面接では20分ほどずっとゲームの話で盛り上がりました(笑)。

二つめは日本で暮らしてみたかったからです。僕は日本人ですが、一度も日本に住んだことがなかったので、インターンシップがよい機会になるのではないかと思いました。

衣里:3年生になって将来どこで働こうかと考えていたときに、一度日本の大企業で働いてみようという選択肢が浮かびました。日本のスタートアップ企業で働いた経験はあったのですが、大企業の経験はなかったからです。また、女性エンジニアがどう働いているのかを間近で見たくて、そんな経験を提供してくれているSIEをインターンシップ先に選びました。

綾華:私も賢朗と同じく日本に住んだ経験がなく、母も現在日本にいるので、絶対日本に行きたいと思っていました。そんなとき日本人の友だちからSIEのインターンシップがあって場所は日本だと聞いたので「絶対にやりたいな」と。加えて私はゲーム好きなので、完璧なインターンシップ先だと思って応募しました。

将来の夢について

健太:僕はものを作るのが好きなので、自分が作ったものが人によい影響を与えられたらいいなと思っています。

隆介:今、シリコンバレーの近くにいるので、最先端のテクノロジーをもった企業や、こぞって起業する人たち、新しい可能性を求めてベンチャーで働く人たちが間近にいます。だから僕も、まずはアメリカでそういう経験をしてから、独自のイノベーションを最先端に押し上げるような会社を日本で起業したいです。

賢朗:一番大きな夢はPlayStation®︎のゲームを作ることです。自分で会社を立ち上げて、チームを組んでゲームを作りたいです。それと、今回日本に滞在して日本が好きになったので、将来は日本に住んで日本とアメリカ、カナダを繋ぎたいと思いました。そして、それを既にSIEが実現させていると気付いたので、就職しても起業してもそういった役割を担いたいです。

衣里:私もバイリンガルであることを活かしたいので、日本と英語圏の架け橋になれたらと考えています。コロナ禍でみんながバラバラになってしまいましたが、それでもテクノロジーが人々を繋げました。それは本当に素晴らしいと感じているので、私もそのように人を繋げることができたらいいなと思っています。

綾華:私には二つの夢があります。まず一つ目ですが、コロナ禍でマスクが不足していたときに友人とマスクデザインコンペティションのウェブサイトを作りました。自分たちが作ったサービスをたくさんの人に使ってもらえる経験ができたと共に、ウェブデザイン、アプリ開発の楽しさを感じたので、フルスタックで活躍できるデベロッパーになりたいです。

もう一つは、以前サマーキャンプに行ったときに、女性の参加者は私だけだったんです。それでプレッシャーや焦燥感を感じ、その経験から今は Society for Women Engineers のメンバーになりました。それらの活動を通じ、今後は STEM 領域(いわゆる理系の領域)へ女性が進出するためのメンタリングサポートや機会の創出に尽力したいです。

インターン生の1日を紹介

ここでインターン生の皆さんが、日々どう過ごされているかを聞いてみました。

【作業時間・ミーティングなど】

インターン生の出社形態はハイブリッド。基本的にはリモートで作業を進められるように作業分担がなされていましたが、複雑な議題が出たら出社してミーティングを行い、ホワイトボードを使いながらアイデアを出し合っていました。

壁のホワイトボードは、インターン生のみなさんがディスカッション時に書いたものです。

【みんなでランチ】

Sony City の食堂にて。この日は「全員でビーチっぽい格好をしよう!」とコーディネートをして出社

お昼休憩は基本的にみんなで食堂にご飯を食べに行くそう。

綾華:「食堂のご飯が美味しい! 毎日写真を撮っていますが、大学に戻ったら食堂の人たちに『こういう料理を作って!』とリクエストしたいくらいです」

賢朗:「食事が美味しすぎて日本に来て太ってしまいました(笑)」 食堂でのランチタイムの後は6人で仲良くソニーシティ内のコンビニに寄ってお昼休憩を終えるそうです。

1on1・コーヒーチャット】

プログラム期間中にはインターン生チームのアウトプットを評価し、指導してくれるエンジニアリングマネージャーがアサインされていました。また、業務外の日常のお悩みも相談できるメンターもインターン生個別にアサインされていました。

賢朗 「SIEはサポート体制がすごいです。悩み事をなんでも相談できちゃう」

衣里  「Slackとかでも気軽に聞けるしね」

賢朗  「人事の皆さんも優しくて素敵です!」

衣里  「よくみんなでゲーム大会もするんですよ」

アサインされたマネージャー・メンター以外のNPXメンバーとの交流もたくさんあり、インタビュー当日はみんなで 『Among Us』を遊んだそう。

【水曜日】

インターン生はソフトウェア開発で用いられる開発手法の一つである「スクラム」というメソッドを採用しています。それに基づき、水曜日はステークホルダー(NPXの他チーム)とのミーティングや、自分たちのチームの振り返り、次週のプランなどの組み立てに一日を費やします。

【退社】

出社・退社時間はそれぞれ自由に任されているので、早めに退社する日もあれば、みんなで一緒にご飯を食べに行く日もあるそう。

実際にインターンしてみて、SIEの印象は?

健太:僕の中にあるSIEの印象は、人種や国籍もそうですが、様々なバックグラウンド、異なる趣味嗜好、考えを持った人が共に働けるようなワークスペースのようなものです。そのような環境下で出会った人と働くことで新たな知見が得られそうな、ダイナミックでいい職場だなと感じました。僕がこのインターンシップ期間を通してお会いできた社員さん全員が、各々の行っている仕事にやりがいを感じており、目的意識を持ちながら仕事できるところにSIEの魅力を感じました。

また、典型的な日本の職場に存在している「堅さ」がSIEではあまり見受けられなかったことも印象的でした。働きながら自分のキャリアパスに気を利かせられる融通性にSIEは長けているとも思いました。

隆介:僕もSIE とソニー は日本の大企業なのでかなり堅いイメージがあったけど、みんな生き生きとしていて、食堂もオフィスの雰囲気もモダンで明るくて自由にアイデアを育みやすいことに驚きました。

あと、PlayStation®︎はユーザーとしてエンドプロダクトしか見えていなかったので、エンジニアが取り組んでいることもフロントエンド寄りのところしかやっていないイメージでした。しかし、そうではなく、役割がすごく細分化され、ユーザー視点では想像もつかないようなバックエンドの複雑さに驚きました。

衣里:私も歴史のある会社だからこそ、日本の堅苦しいのを想像していたのですが、実際はオープンな社内の雰囲気にとても驚きました。普段の仕事や、メンター、(エンジニア)女子会などを通してSIEについて知れば知るほどもっとフリーな社風だなと思いました。

綾華:入社前に親に聞いていた話だと、日本の企業は厳しく保守的で、「規定の出社時間より前に出社して、オフィス掃除や昼食のお料理のお手伝いをする」ものだと思っていました。ですが、想像よりもずっと自由で、立場がインターン生であろうと社員さんやマネージャーに気兼ねなく意見を言え、自分で出社形態(リモート勤務や出社時間など)を決められることに驚きました。

衣里:ただ、思ったより女性が少ないとは感じました。今後女性エンジニアがより増えることを期待します。

綾華:私も一つ期待を下回った点をあげると、オフィスの雰囲気です。テック企業はもっとモダンなデザインのオフィスで、無料のお菓子やドリンクが常備されていたり、社員の交流を促すラウンジスペースがたくさんあったりすることを期待していました。ソニーシティのオフィスでもフリードリンクのスペースを増やすなど、社員さん同士の交流がより活性化されるとよいと思います。

賢朗:僕は社内組織に驚きました。例えば、コンピュータセキュリティのルールから、スクラムチーム内でのタスク分け、人事のサポートまで、小さな会社とまったくレベルが違い、感動しました。それと、SIE内で世界中の社員が言語の壁をどう乗り越えて協力しているのか見られてよかったです。

和羅州:イベントが多くてコミュニティー感が強いと思いました。また食堂が美味しくてオフィスに来ると楽しく作業ができるのが印象に残りました。ただ大企業のオフィスにはトレーニング用のジムがあると思っていましたが、なかったので驚きました。SIEの海外オフィスにはジムがあるようなので、東京オフィスにもジムは欲しいです!

インターンシップで学んだことについて

健太:僕はインターンシップ初参加になります。大学外でプログラミングをしたのも初めてでしたが、チームで働くことの意義、難しさ、その両方を知ることができました。コードを書くときに何に気をつけたら良いのか、実践的なことも勉強になりました。また、みんな多様なバックグラウンドを持っているので、仲間からの学びも大きかったです。僕の考えとは異なる方法を提案されて「なるほど」と納得することも度々ありましたし、ポジティブな意見交換ができました。

隆介:大学でのコーディングは自分一人で行うので、おのずと自分がわかりやすければよいものになります。しかし、チームで行うにはお互いの進捗を確認したり、必要なミーティングを行ったり、6人同時にコードを編集できるツールも必要になります。それらのマネジメントのツールが充実していることがすごいと思いました。

賢朗:僕はインターンシップ中、チームのスクラムマスターを務めていたのでみんなをまとめることについて学びがありました。メンターの方々も色々な知恵を貸してくれて、マネジメント用のツールの使い方も教えてくれました。

綾華:私はフロントエンド側を担当していました。一般的にフロントエンドはデザインをもらってからコードを考えるのですが、現実に起こっている問題について、どうやってそれを解決するのか、実際のフィーチャー(サービス)に落とし込めるかをイメージしながらコードを書いていました。そういったスタイルの開発は初めてだったので、新しい学びになりました。

衣里:一番良かったことは一緒にインターンに来ている人たちが、みんな楽しい人たちだったことです。平日ずっと一緒にいるのに休日も一緒に遊んで、みんなで大阪旅行にも行ったりしました。全く違うところから来た、絶対にここでしか出会えなかった人たちです。貴重な出会いを得ることができました。

今後の目標について

健太:今までコーディングは自分一人の世界で完結するものだと思っていました。しかし、こうしたグループで働くことで、それぞれに色々な考え方があるので、話し合いや、コミュニケーションが大切だと実感しています。これからグループで働く機会があったら、そういった経験を活かして開発していきたいです。

綾華:他の方々が、独りよがりではない他人が読めるコードを書けることにリスペクトを感じました。またスクラムメソッドに則って働くことの意味を実感することができました。それをこれからも活かしていきたいです。

賢朗:やっぱりゲームの会社は楽しいですね。ほんとうに来て良かったです。ゲーム開発会社を作るという夢も揺るぎないものになりました。また、初めて日本で暮らしましたが、話で聞くのと実際に住むのでは全く違って、それが良い経験になりました。また日本に来たいので今度は留学しに来ます。

衣里:インターンシップで初めて自分でウェブアプリを作ることになり、たくさんの学びがありました。私は今回、フロントエンド側を多く担当したのですが、今後はそれだけにとどまらず、インターンが終わったあともバックエンド側についても学んで、フルスタックでできるようになりたいですね。

隆介:企業の中で、チームで働くことの大切さ、新しさが刺激になりました。大学でも共同作業をしているのですが、大学と企業では求められるものが異なります。企業での共同作業は、結果や成果を出すことが重要になるため、それらのためにどうするかを考えることがとても面白く感じました。この経験を将来に役立てられたらと思います。

大学での学びを離れて、実践的なスキルを身につけたインターン生たち。楽しく学んでいることが、お話を伺った中で十分に伝わってきました。SIE NPXを離れたあとも、インターン生たちそれぞれが選ぶ道で輝くことを心より応援しています!

今回のインターンシップ(LAB)の募集要項はこちらからご確認いただけます。

LAB 2022年度インターン生紹介

吉居 健太(よしい けんた)
ブラウン大学 3年生
専攻:コンピューターサイエンス
趣味:ランニング、料理
王山 賢朗(おうやま けんろう)
トロント大学 3年生
専攻:コンピューター工学
趣味:漢字を勉強すること、日本の小説を読むこと
渡辺 綾華(わたなべ あやか)
カリフォルニア大学バークレー校 2年生
専攻:コンピューターサイエンス、データサイエンス
趣味:歌を歌うこと、写真を撮ること、漫画を読むこと
末廣 隆介(すえひろ りゅうすけ)
カリフォルニア大学バークレー校 2年生
専攻:コンピューターサイエンス、統計、ビジネス
趣味:テニスとゴルフ、スポーツ全般
吉田 衣里(よしだ えり)
トロント大学 3年生
専攻:コンピューター工学、ビジネス、人工知能
趣味:ジムに行くこと
ラッフォーネ 和羅州(らっふぉーね にこらす)
ニューヨーク大学アブダビ校 3年生
専攻:コンピューターサイエンス
趣味:筋トレ