DualSense® ワイヤレスコントローラーが叶える、すべてのプレイヤーのためのアクセシビリティと音楽体験
本記事では、Jesse Austin-Stewart氏 (Jesse) そして、触覚を通じて音楽に触れるという独創的で画期的なプロジェクト「Music for PlayStation」をご紹介します。Jesseは、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の社員でも関係者でもありませんが、これまでにゲーム業界が推進してきたアクセシビリティ向上の実現に向けて大きなムーブメントを起こしてきました。
耳ではなく、体で感じられるように制作されたJesseの音楽は、DualSenseワイヤレスコントローラーの革新的なハプティックフィードバック機能による振動を手で受けることで、聴覚障がいの有無に関わらず、すべてのリスナーが同じように楽しむことができます。今回の記事では、プロジェクトを立ち上げたきっかけ、直面した課題、ゲーム業界におけるアクセシビリティの今後の展開などについて、Jesseに伺いました。
ひらめき
Jesseが本プロジェクトを立ち上げたのは、2022年に博士過程を修了する頃のことでした。当時、ホームエンタテインメント業界では「空間オーディオ」が話題になっており、Jesseは「サウンドアート」の観点から空間オーディオに着目したと言います。「サウンドアートにおける空間音楽を、教育を通じて、障がいや聴覚の観点からより身近なものにしたいと思ったのがきっかけです。」
この発想を機に、腕を置くことでさまざまな接触ポイントから振動を感じることができるボードなど、Jesseの空間オーディオインターフェースの開発が始まりました。「ボードの開発に協力いただいた聴覚障がいのある方々の間で、これまでの音楽体験における障壁が取り払われたうえ、とても使いやすかったと好評でした」と、Jesseは当時のことを語ります。
インターフェースの開発でJesseが得たものは、達成感だけではなく、新たな発見の数々でした。
発見
偶然にも、DualSenseワイヤレスコントローラーをオーディオインターフェースとして使用することに関する記事を見つけたJesseは、実際にDualSense ワイヤレスコントローラーを介してSpotifyの音楽を再生してみました。すると特定の周波数に合わせて振動モーターが著しく反応することを発見。概念実証を重ねていくうちに、Jesseの開発に対する創造的なひらめきは、本格的な開発へと発展していきました。DualSenseワイヤレスコントローラーをはじめとする、実用的で使いやすく、技術的にも親しみやすいアクセシビリティ周辺機器に、自らの学びを適用したJesseは、「作曲家とユーザーのどちらともが簡単に使える技術をプロジェクトに採用することにより、より身近な存在になったと思います。そういった点でも、とても満足できるプロジェクトでした。いろいろと制約があった初期の試作品とは対照的に、DualSense ワイヤレスコントローラーは差し込むだけで使うことができます」と語ります。
コントローラーを使った音楽という斬新なコンセプトの応用に向けてJesseが取り組んだ課題は、音源を忠実に再現するための振動と感触を出力するためのハードウェアの調整でした。「音楽では、さまざまな楽器による多種多様な音色が聴こえてきますが、これをDualSense ワイヤレスコントローラーの機能を活用して表現するとなると工夫が必要でした」と言います。Jesseは異なる周波数で実験を重ね、フィードバックを取り入れ、出力の感触を確認しながら、この難題に取り組みました。これが、のちのJesseと聴覚障がいのあるアーティストとの企画的なコラボレーション、振動を体感するプレイリストの始まりでした。
インスピレーション、そしてこれからのアクセシビリティ
インスピレーションが起こるきっかけは様々ですが、Jesseの場合、彼自身の研究をアクセシビリティに活かす動機となったのは音楽業界でした。記号や、文章、そしてアメリカ手話を積極的に取り入れた音楽を制作することで知られる、Christine Sun Kimなどの聴覚障がいのあるサウンドアーティストたちとともに、音そして音が社会に与える影響についてのディスカッションにも参加しています。「Christineをはじめ、 Suranga Nanayakkaraや、Ene Alicia Søderberg、そしてBlake Johnstonも、触覚や振動聴覚をさまざまな形で音楽に取り入れているサウンドアーティストたちです。」
次のステップは、自身のアイデアとそこから生まれるプロジェクトの成果を、より多くの人々に届けることだとJesseは言います。 「フェロー諸島で近日開催される音楽関連のカンファレンスに出展をする予定です。私のアイデアをたくさんの人に広めて、そして考えてもらえるよう、多くの場所で展示を行い、露出を増やしたいと思っています」と語るJesseは、彼の作品にインスピレーションを受けた人は、そこからさらにアイデアを展開してほしいと呼びかけています。「他の方々が同じコントローラーをどのように活用するのか、拝見できるのが楽しみです。」
Jesseは、自身の活動内容の露出を増やすことで、アクセシビリティに取り組む専門家たちの活動にも影響を与えることができると考えています。また、エンタテインメント業界全体、そしてSIEの積極的な姿勢は、集団的かつ包括的なアクセシビリティ活動の推進につながるため、彼にとって励みになっていると付け加えました。
「ゲームプレイと視覚的アクセシビリティの分野では、この15年ほどの間で著しい進化が見られました」とJesseは言います。そして、視覚だけでなく、触覚、聴覚などのアクセシビリティオプションも多様化するように、エンタテインメントの事業や機関がこれからも選択肢を増やしていくとともに、障がいのある人たちにも開発プロセスに参加してもらうことが非常に重要だとJesseは考えます。「事業や機関には重要な役割があるからこそ、ディスカッションや方向性決定のプロセスに障がいのある方々が関与することが大きな鍵となります。」
原文はこちら