長年にわたり、ゲームは世界中の何百万人もの人々に楽しまれるようになり、よりインクルーシブな未来に向けて取り組むことがますます重要になってきました。新しい技術やイノベーションを探求し続ける中、誰もが楽しめる体験を生み出すことが、ゲームにおけるアクセシビリティのゴールです。

本記事では、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)のアクセシビリティコンサルタント、Paul Amadeus Lane氏がこれまで携わってきたプロジェクトの数々についてご紹介します。下記にて、対談を要約した内容をお届けします。

— — — —

本日は、SIEと共に、ゲームやアクセシビリティに関するあらゆる活動に取り組んでいるアクセシビリティコンサルタントのPaul Amadeus Laneさんをお迎えしています。インタビューに応じていただき、ありがとうございます。

Paul:こちらこそ、このような光栄な機会を与えていただき、本当にありがとうございます。

早速ですが、アクセシビリティの分野でPaulさんがどのような活動を行なってきたかご存じない方々のために、生い立ちや背景についてお聞かせください。

Paul:もちろんです。私は電動車椅子を使用しています。かれこれ30年以上の付き合いです。私はC6四肢不完全麻痺で、脚は動きませんが、腕は動かせます。また、発言を通じて自身の経験や体験談を伝えることができます。本職は放送ジャーナリストですが、副業でアクセシビリティコンサルタントとしても活動しています。

Paulさんはまさに、「エンタテインメントの王様」のような方だと思っていました。長年、ラジオの仕事に携わってきたんですよね。

Paul:ありがとうございます。アクセシビリティコンサルタントという仕事は、本当に好きでやっていることなんです。障がい者である私自身が日々直面している困難や、それらを克服するために何が役立ったかなどの情報を、周りと共有する機会が欲しいと思っていますし、同じような境遇の人々を助けたいという思いがあるからです。特に、ゲームに関しては。

ゲームのアクセシビリティは、非常に多くの人々に影響を与えるものであり、やれることはまだまだたくさんありますよね。Paulさんのような方の活動は、アクセシビリティに対する考え方や取り組み方のスタンダードを上げていると感じます。さて、アクセシビリティコンサルタントというのは具体的にどのような仕事なのでしょうか。

Paul:ゲーム業界やテクノロジー業界と協力し、大人、高齢者の方々、私のような障がい者コミュニティーを含め、すべての人にとってテクノロジーをよりアクセスしやすいものにするための活動をしています。

製品を実際に扱えるかどうか、なにか障壁があれば、それらを克服するためにどうすればいいか、についての施策を考えています。また、さまざまなテクノロジーを使用する際に、使いづらさなどの課題を見つけ出し、障壁を減らすことで、すべての人がより利用しやすくなる方法を提案しています。

この仕事を始めるきっかけはなんだったのでしょうか。アクセシビリティコンサルタントとしてのキャリアはどれくらいですか?

Paul:それはもうクレイジーなきっかけでしたね(笑)2015年頃からでしょうか。ジャーナリズムの仕事を通じてたまたま出会ったんです。あらゆるテクノロジー企業を取材する際、私はいつもこう問いかけていました「私のようなユーザーが、これらのテクノロジーを利用するにはどうしたらいいですか?」

彼らは回答に手こずるケースもありましたが、ある時、こう返してきたんです「何が必要なのか、ヒントをもらえないだろうか?」と。それから、テクノロジー業界へアドバイスするようになったんです。

そして2017年、E3のPlayStation Showcaseに参加したとき、当時SIE で法務部門所属だったKevin Chungさんが私に、イベント全体を見渡せているか親切に声をかけてくれました。それに私が「ちゃんと見えていますよ」と答え、その流れで少し会話を交わしました。私が「これらのゲームが遊びづらかった」と打ち明けると、彼が「Naughty Dogでは素晴らしいものを作っているんだ」と言うので、「自分が直面している困難について、誰かと共有する方法はないだろうか」と聞いたのです。

この偶然の出会いがきっかけで、ゲーム業界のアクセシビリティコンサルタントになったんです。

例えば『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』といったタイトルでは、具体的にどのような機能を監修されたのでしょうか。

Paul:そうですね、例えば戦闘時に簡単に移動ができるようにしたり、様々な戦闘アクションも監修しました。通常は複数の手の動きやボタン押しが必要な場面などで、「ボタンを1回押すだけか、クイックタイムイベント(決められた時間内に何らかの操作を要求される演出のこと)にできたら良いと思う」などとアドバイスをし、完成版にそれらが反映されているのを確認したりしました。

PlayStationの作品に限らず、プレイしていて「このゲームは私のようなプレイヤーのことを考慮して作られている」と初めて思われたゲームはなんでしょうか?

Paul:実を言うと、PlayStationのゲームが初めてなんです。

とても仲の良いJosh Straubさんが開発に携わった『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』をプレイした時、「すごい!素晴らしい!」と初めて感じました。私のように、多くのゲームで遊びづらさを感じるプレイヤーをサポートするあらゆる機能が実装されていて、それらがうまく機能していたのです。

それまでは、楽しめない作品が多すぎて、ゲーム自体に苛立ちを覚えていました。昔、父が家に持ち帰ってきた世界初の家庭用ゲーム機と言われる「オデッセイ」をプレイしていましたが、それはジョイスティックボタンひとつで遊べ、私はそういう操作に慣れていました。

特に事故のあと、指の動きが悪くなってからは、どうしても難しい操作ができなくなってしまいました。顎、唇、頬などを使って操作することは可能ですが、あまり複雑なことはできません。「ゲームの本当の楽しさ」が体験できなかったのです。そんな時、『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』の様々なアクセシビリティ機能を目の当たりにし、感動しました。「これなら、ちゃんと遊べる」と。

現在、取り組んでいるプロジェクトで、お話いただけることはありますか?

Paul:「Access コントローラー」について、お話しします。開発当初と現在に至るまでの進化の過程を見届けるのは、本当に素晴らしい経験でした。コントローラーが発表された時、私も「CES」にいましたが、夢のような瞬間でしたね。ただ、ちょうどその時間は「Consumer Technology Association Foundation」が毎年開催しているアクセシビリティ関連の交流会に参加しており、アクセシビリティ全般や、テクノロジーがよりインクルーシブである必要性について話し合っていました。そのため、ソニーの基調講演は、ちょうど移動中で見逃してしまったんです。ホテルに戻るまでの間、実は「君の出演してた映像は見れた?」と電話が鳴り止みませんでした。後で録画を見ましたが、テクノロジーの「スーパーボウル」のようなビッグイベントで、Access コントローラーが登場し、世界に公開されたことに、心から感動しました。

私は2020年からこのプロジェクトに携わっていますが、素晴らしいエンジニアたちや、私を含むアクセシビリティコミュニティーから得たフィードバックによって、現在このプロジェクトがここまで来たことを考えると、この先は無限の可能性が広がっているんだと実感します。

今後も素晴らしい発表があるでしょう。皆さんをきっと驚かせることができると、私は確信しています。

— — — —

アクセシビリティコンサルタント、Paul Amadeus Lane氏の完全版インタビューは、「Official PlayStation Podcast Episode 458: Access Granted」(英語のみ)で視聴いただけます。

原文はこちら