ダイバーシティ、エクイティおよびインクルージョン(DE&I)の重要性が高まっている昨今、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)では、DE&Iを尊重し、すべての社員が自分らしさを活かしながら、その能力を最大限発揮できる職場づくりを推進しています。SIEが誰にとっても働きやすい職場であり、そして素晴らしい遊び場であるために何ができるかを考え学ぶ機会も設けています。では実際に障がいのある人がSIEでどのように働き、何を感じているのか? 12月3日の国際障がい者デーにさきがけ、聴覚障がいのある、SIE法務・渉外部の石田 怜子から体験談を聞きました。


――石田さんの担当業務を教えてください。

石田 主に契約書のレビューや、日本の法律の確認、グローバルキャンペーン施策の法的検討、アジア地域におけるコンプライアンス活動の確認などを行っています。

――学生時代はどのようなことをしていましたか?

石田 法学部政治学科で日本史や政治経済、法律など幅広く学びながら、仲のいい友人と「女子手話同好会」を作り、手話を教え合ったり、合宿と称して旅行を楽しんだりして交流を深めました。

――SIEに入社しようと思ったきっかけを教えてください。

石田 当時プレイステーション®2で『ファイナルファンタジーX』をプレイした際に、グラフィックの美しさや物語に感動し、プレイステーション®を作っている会社に興味を持ちました。SIEの入社試験の面接では人事担当者と『ファイナルファンタジーX』の話などで盛り上がり、こんな人事の方がいる会社に入りたいと思ったのが最終的な決め手です。

ゲームやプレイステーションに関わる業務ができるということ、さらには魅力的な人たちが多そうで、そういった人たちと関われることが楽しみでした。

――入社前に不安だったことはありますか?

石田 補聴器をつけているため耳からでもある程度は音を拾っているのですが、口の動きが読み取りにくい状況では会話が難しく、また、周囲のノイズが多い環境では声が聞き取れないことが多々あります。複数の友人や知人たちとの雑談で、皆が笑っていてもなぜ笑ったのかが分からないこともありますが、話の流れ上聞き返すことができず、はがゆい思いをしたこともありました。ですので、職場の方々とコミュニケーションがとれるかどうか、打ち合わせについていけるかどうか、ひいては業務をきちんと遂行できるか、不安でいっぱいでした。

――実際に働いてみて不安は解消されましたか?

石田 はい。配属先の自己紹介で、耳が聞こえないため口の動きを見せて話してほしいこと、電話は難しいことを伝えたところ、皆、口元を見せて話してくれました。打ち合わせ時は必ず同部署の他のメンバーが同行し、議事録を後で共有してくれて、自分が作った議事録も同行メンバーがチェックしてくれたので助かりました。また、業務はメールベースだったので、ほとんど困ることはありませんでした。

石田 これは個人的な印象ですが、SIEのスタッフは障がい全般をごく普通のこととして受けとめているように思いますし、ソニーグループ全体でダイバーシティを促進する動きが活発になっていることも良いことだと思います。また、生活のIT化や時代の変化に加えて、自分と周囲の方々が経験を積むことでよりフレキシブルになり、お互いに対応しやすくなっているように感じています。

――世間の障がいに対する受けとめ方が少しずつ変わってきているということですね。

石田 そうですね。私は小学生の長女と保育園児の次女がいるのですが、長女の友人に私が聴覚障がい者であることを伝えると、後日その子が手話で話しかけてくれて驚きました。ネットで検索して手話を覚えたのだそうです。以前は手話に対する認知度が低く、また、手話を覚えるためには本屋に行って手話の本を買わないといけなかったと思うのですが、今は子どもも含めて手話の存在が広く知られており、自宅ですぐに手話を調べることもでき、いい時代になったなと感じています。

――社内や社外の方とはどのようにコミュニケーションをとっていますか?

石田 コロナ禍前ですと、社内の会話は口の動きを読み取り、課会では部署のメンバーがPCテイク(文字通訳のこと。会議などの内容を聞き取りパソコンで筆記していく、同時通訳のようなもの)をしてくれました。

コロナ禍になってからは、主にウェブ会議ツールのチャットで交流していますね。以前は音声通話が必要な場合、文字を音声化する会話支援アプリを使っていました。このアプリはPCから流れてくる音声を拾うこともできますが、アプリに直接話しかけてもらう方が精度が上がるので、課内では皆が自身のスマホに会話支援アプリをインストールしてくれていました。また、課外の方との打ち合わせが発生した場合でも、ほとんどの方がスマホへのインストールを快諾いただき、感謝するばかりです。最近ではウェブ会議ツールの機能拡大により日本語の字幕が簡単につけられるようになり、会話支援アプリが不要になったため、だいぶ音声会話のハードルが下がりました。

海外部門にも耳が聞こえないことを伝えてあるので、常にチャットでやり取りしています。社外の方とは業務上やり取りすることは滅多になく、あってもメールでやり取りするのみなので今のところ特に支障はないですね。もし実際にやり取りすることになった場合、部署のメンバーに同席してもらうかたちになるかと思います。

――SIEの仕事ではどんなところにやりがいを感じますか?

石田 プレイステーション®5(PS5™)発売前は業務量が特に集中し、育児をしながらの対応にかなり苦労したのですが、無事にPS5が発売されたなか、自分もこのPS5発売に関われていたのだと思うと感慨深いものがありました。

そのほか日々の業務で、締切を守ることは当然のことではありますが、締切が当日中になっている複数の案件を当日中にすべて終わらせたとき、プチ達成感を感じています(笑)。

――普段はどのようなワークライフバランスで働いていますか?

石田 1年を通じて比較的落ち着いている時期、多忙な時期と波がありますが、育児短時間勤務制度を活用しつつ、毎日家族でコミュニケーションを取る時間を確保できるよう意識しています。

コロナ禍以前は子どもを保育園に迎えにいくため、絶えず時間に追われながら業務をこなしていましたが、コロナ禍でテレワーク中心になってからは、時間配分をしやすくなり、業務中の気持ちに余裕が出てきたと思います。保育園からの登園自粛の協力要請により子どもが家にいる時間が長くなり、業務中に相手をして大変なこともありますが、習い事の送迎がしやすくなったり、子どもと接する時間が長くなったのは良かったと感じています。

――普段、気分転換や息抜きはどんなことをされていますか?

石田 週末は家族でゲームをプレイして冒険に出かけたり、近所のカフェに行ったり、密を避けてドライブに行ったりしています。

最近はお取り寄せにはまっていて、コロナ禍前に行っていたもつ鍋やパスタ、ラーメン店などのサイトを見てみると意外にお取り寄せを始めていることが多かったため、注文して家で楽しんでいます。お店で食べたときの味に近いものもあり、そのような商品に当たるとうれしくなります。そしてますます実際にそのお店に行きたい気持ちが強まります(笑)。

――石田さんが考える、障がいのある人でも働きやすい職場環境を教えてください。

石田 障がいの種類や程度は一人ひとり異なり、必要とするサポートも異なります。まずは障がいのある人自身が、自分の障がいについて気軽に伝えられる環境であることが重要だと思います。無理のない範囲で、障がいのある人と職場のメンバーがお互いに歩み寄れたらいいですね。

――話しやすい環境を作り、維持するためにはどうしたらよいと思いますか?

石田 私が経験した範囲でお話しすると、聴覚障がいの場合は会話支援アプリやウェブ会議ツールの字幕機能のようにツール面でのサポートがあると、議事録作成や英語字幕の使用などにおいて、自分だけでなく、職場のメンバーも助かる側面があると思います。便利だと思われるツールはどんどん導入していき、周囲の理解とツールの両方の側面からサポートを進めていけると理想的ですね。そして障がいのある人自身が感謝の気持ちとともに、自分が必要とするサポートについて具体的に発信することも大切なのかなと思います。

――今後の目標を教えてください。

石田 育児とのバランスを取りながら業務を続けることと、英語力の向上です。子どもの成長を見守れるのは今しかなく、また、子どもが大きくなるとともに家族皆で過ごせる時間が減っていくだろうと思うと、可能な限り家族の時間を大事にしておきたいです。先日、社内のとあるマネジメントの方々が社員に向けて、「育児にはあまり関わることができなかったが、子育ての時期は限られている」「上長は育児、介護について必ず協力する。新しい家族以上に大切な仕事があるのか、と問いかけてほしい。仕事は誰かがカバーできる。しかし、家族にとってあなたの代わりとなる人はいない」といったやり取りをされていて感動しました。私の上司も育児に対して理解があり、育児と障がいに対する理解がある職場で働けることにとても感謝していますし、モチベーションの維持にも繋がっています。

石田 英語力の向上については、業務上、海外部門とのやりとりが多く、文章を考えて英語をタイピングするだけでかなり時間がかかってしまいます。雑談のくだけた英語の表現を読み取るときはさらに時間がかかるので、もっと英語力をつけたいですね。

――最後に障がいがあり、SIEへの入社を検討されている方にひと言お願いします。

石田 SIEでは現在ダイバーシティへの取り組みが盛んで、社内セミナーや座談会なども頻繁に開催されており、社員のダイバーシティに対する意識が高くなっていることを感じています。やる気があれば障がいの有無に関わらずさまざまな業務を任せてくれるので、働きがいのある職場だと思います。興味をお持ちの方はぜひご検討ください!